不動産業界でたびたび課題として挙げられる不動産DX。耳馴染みがある人も多いかもしれません。しかし、不動産DXと聞いてどのようなものを指すのか明確な人は少ないでしょう。
また、似た用語として「不動産テック」という言葉があるため、違いをわかっていないと顧客に提案するときにつまづいてしまいます。本記事では、成功事例と合わせて不動産DXについて紹介します。
不動産DXとは
不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、不動産業界の業務にIT技術を導入し、物件・顧客管理や書類の手続きなどをアナログからデジタルに移行する動きのことです。
DXは不動産業界に限定された言葉ではなく、IT技術の浸透による生活の向上や競走上の優位性を狙っているビジネスで用いられます。なお、不動産業界のDXは進んでいるとは言えず、さまざまな課題が残っている状態です。課題と解決策に関しては、次章から解説します。
不動産テックとの違い
似た言葉に”不動産テック”がありますが、指しているものが異なります。不動産とテクノロジーを合わせた造語で、テクノロジーを使って不動産業界の課題解決や商習慣の改善を図ります。
ようするに、不動産DXの大枠の中に小枠で不動産テックが含まれているイメージといえるでしょう。不動産テックにはさまざまなビジネスモデルが混在しているため、自社に合ったサービスを選ばなければいけません。
日本における不動産DXの進み具合
全国賃貸住宅新聞社と不動産テック事業者、業界専門メディアが合同で行った「不動産業界のDX推進状況調査」の結果(766人対象)によると、不動産業界の98.4%もの人が不動産DXを促進すべきと回答。
しかし、実際に不動産DXに取り組んでいると回答した人は、わずか31.9%です。今後取り組む予定がある人は38.5%と、前向きに検討している人も多い印象。
不動産DX促進の目的として、業務効率化・生産性向上を挙げている人は93.4%と最も多く、次いで顧客満足度アップが53.3%と、約半数の人が答えています(複数回答可)。
上記の結果から見ると、不動産業界で働く人の業務負担が多いほか、人材不足がうかがえます。
なお、導入検討中のDXでは、電子契約システムが18.7%、IT重説のためのシステムが15.8%、電子申込システムが14.0%となっており、いずれも不動産のオンライン化に欠かせないサービスです。
また、不動産DXに取り組んでいる(いた)期間として2年未満が70.6%と、最近取り組みだした人が多い結果となりました。
実際に取り組んでいる人の多くは不動産DXの効果を実感しており、検討している人の背中を押す結果となりました。
そのほかにも、政府は「デジタル田園都市国家構想」を発表するなど、地方自治体(不動産)とデジタルを掛け合わせた政策も行っています。
行政からの受注を狙う地方デベロッパーにとって、不動産DXは必須といえるでしょう。
出典:デジタル田園都市国家構想
不動産DXの課題
前章で不動産DXの促進状況について紹介しましたが、必要だと思いつつも導入に至っていないことがわかります。現在の不動産DXの課題は主に3つ挙げられます。
それぞれの課題と合わせて解決策も見ていきましょう。
不動産テックを浸透させていく
不動産DXを加速させていくためには、不動産テックの浸透が欠かせません。
不動産テックはさまざまなジャンルに分けられますが、クラウドファンディングやリフォーム・リノベーションでは市場規模の拡大が期待できるでしょう。
上記資料は、国内不動産クラウドファンディングの出資募集額と案件数の推移です。2018年度から2020年度では募集額が約4倍に増えていることがわかります。
魅力ある投資物件でないと投資家に出資してもらえないため、ほかの不動産テックと組み合わせることも視野に入れましょう。
中古住宅の市場規模も、戸建て・マンションともに伸び予測の見通しであり、中古住宅を改修する際の設計・販売についてや、顧客とのマッチングの不動産テックとの相性も良さそうです。
そのほかにも、自社に合った不動産テックを導入することで、デベロッパーの労働条件も改善されるでしょう。
組織的な不動産DX推進体制の確立
不動産DXの必要性を感じているものの導入に至っていないケースの多くは、会社としてDXに取り組めていないことがあります。現場の声は効率化を求めているものの、なかなか組織として取り組むには後ろ向きです。
不動産DX導入の効果には即効性がないため、後回しになりやすい側面もあります。
DXの目的を明確にしたうえで長期的に取り組める組織体制を整える必要があるでしょう。
不動産DXに精通した人員不足
実際にDX推進の過程で苦労したこととして、費用・予算とほぼ同じくらいの割合で「DX推進人材の確保」が挙げられています。必要となる主な人材は以下の通りです。
エンジニアやプログラマーなどの技術職のほかにマネジメントを行う人材、サービスや業務の把握なども必要になります。これらを満たそうと思うと、OJTが必要になるでしょう。なお、新たな人材を雇用するのではなく社内の人間でまかなえることが一般的です。
不動産DXを促進するメリット
不動産DXには費用や人材が必要であるため、業務のフローやマニュアルも見直さなければいけません。そこまでするメリットはあるのか、不安に思う人もいるでしょう。具体的には3つのメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務効率化が実現
不動産DXを推進する大きな理由として、業務効率化を挙げる企業も少なくありません。ペーパーレスで書類やデータがオンライン化されるため、顧客情報の管理や更新、業務の引き継ぎがスムーズに行えるようになります。
また、商談資料などもクラウド管理しておくことで店舗間を超えた共有もスピーディーになるでしょう。
労働力の確保
不動産業界における人材不足は深刻な状況です。
厚生労働省の調べによると、令和2年、3年ともに不動産業・物品賃貸業の離職者は入職者よりも多く、人材の流出が止まりません。また、入職者数自体も減少しているため、人材不足は深刻な状況です。
不動産DXの導入によってデータの管理など雑用作業にかかる時間を削減できるでしょう。また、不動産管理や価格査定など、経験者でなければできなかった業務も不動産DXを使うことで新人教育の負担を減らすことが可能になります。
そのほかにも無人内覧システムなど、従来では従業員が行っていた業務をIoTに任せることで少ない人材で業務を回せるようになります。
新しいビジネスモデルの確保
ビジネスを加速させるためには、新しい事業にも挑戦する必要があるでしょう。従来の不動産に付加価値を生み出すことが重要です。例えば、古くなった不動産をリノベーションしてスマートホームや介護集合住宅にするなど、業務の幅を広げられる可能性があります。
地方創生の一手としても重宝されるため、地方進出やサテライトオフィスなど構える予定があるデベロッパーにとって、不動産DXは必要投資となるでしょう。
不動産DXの成功事例
日本ではまだまだ浸透していない不動産DXですが、実際に導入し成功している企業もあります。最後に、実際の導入成功事例を3つ紹介します。
三井不動産
三井不動産は住宅やオフィスビル、ホテルやリゾートなど、手掛ける不動産すべての空間にDXを採用しています。不動産そのものをアップデートすることで顧客の多様化にも対応するだけでなく、従業員の生産性の向上にも役立っています。
長谷工コーポレーション
長谷川コーポレーションでは集合住宅におけるICT活用を積極的に行っています。設計段階からAIを駆使するなど、デジタルデータの活用が得意です。なお「長谷工版BIM」と呼ばれる独自のBIMを展開し、広告や販売にもDXを取り入れています。
アットホーム株式会社
スマート内覧を採用し、顧客のニーズへの対応・従業員の負担減を可能としたのがアットホーム株式会社です。実際に利用した顧客のスマート内覧に対する満足度は高く、成約機会の拡大を狙えているでしょう。
当社でもスマートセルフ内覧システムを提供しています。顧客・従業員双方にメリットが大きいスマートセルフ内覧は、これからの時代の営業拡大・成約機会の拡大には欠かせません。
不動産DXとは企業の発展に欠かせない存在
従来の販売・営業方法の場合、今後不動産のスマートホーム化が加速した際や人材不足が深刻化した際、事業存続が厳しくなる可能性があります。不動産DXによって新しいビジネスの機会が見出せるだけでなく、生産性の向上にも期待できるため、従業員のモチベーションアップにも欠かせません。
当社はスマートホームやヘルスケアなど不動産DXのIoT分野に精通しています。不動産DXの導入を検討している人は、ぜひ一度ご相談ください。
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