不動産業界を生き残るためには、それぞれの課題をクリアしていく必要があるでしょう。3月22日に2023年の公示価格が国土交通省より発表され、全用途の公示価格全国平均が前年に比べて1.6%上昇し、大きな話題を呼びました。商業地ではコロナ前まで回復傾向となっているほか、住宅地では現在の低金利も購入を検討する人の背中を押しているようです。
日本の住宅でも畳からフローリングが主流となったように生活スタイルの変化によって求められる不動産は常に変化しており、時代に合わせて提供する不動産や売り方を変えなければいけません。
本記事では、デベロッパー向けに不動産業界の課題と解決策を解説します。データと照らし合わせながら時代に寄り添った企業に変化する術を探っていきましょう。
不動産業界の現状
不動産業界の課題を知るためには、まず現状を把握しておかなければいけません。
2022年12月のサービス産業動向調査の結果によると「不動産業・物品賃貸業」全体では約4兆円の売り上げがあり、前年同月比で2.7%プラスになっています。
サービス産業に従事している人数は全体で増加傾向にある一方、「不動産業・物品賃貸業」に関しては約158万人と、前年同月比で0.2%減少しています。
同資料によると「不動産賃貸業・管理業」は月間売上が上昇しているのに対し、「不動産取引業」は前年同月比で1.2%減少しています。また、前年同月比で専業従事者数は「不動産賃貸業・管理業」マイナス0.6%、「不動産取引業」はマイナス1.5%と、いずれも減っています。
現状が続くようであれば、不動産取引業界の縮小が懸念されるため、早急な対応が求められるでしょう。
不動産業界全体を取り巻く課題
歴史の中でも古くから続いている不動産業。昔と今では置かれている状況も変わってくるでしょう。現在の不動産業を取り巻く課題は、主に3つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人口・世帯数の減少
出典:総務省統計局
総務省統計局の調査によると、2023年3月1日時点で日本の総人口は1億2,449万人で前年同月に比べて61万人減少しています。短期的に減っているわけではなく、過去10年間で比較しても減少傾向にあることがわかるでしょう。
人口が減る問題にくわえて高齢化していくため、さらに、オフィス市場の減少や労働力減少の課題も出てきます。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」12P
厚生労働省の調べによると、不動産業・物品賃貸業に従事する人は入職者より離職者が多いことがわかります。また、入職者数も減少していることから、今後は人材確保が困難になることも予想されます。
なるべく良い人材が入るような仕組み作りだけでなく、不動産DXをすすめていかなければ、業界拡大は難しいかもしれません。
アナログから抜けだしにくい
”不動産”はオンライン化しにくい特性があるため、いまだに書面や対面で契約することが多い商品です。
出典:総務省「令和4年版 情報通信白書」7P
不動産業界に限らず日本のDXは米国と比較しても遅れており、今後は業務の一部からDX化に向けた動きが必要となるでしょう。
労働生産性の推移を見てみると、2000年を100とした場合、不動産業は2019年には81まで落ちています。この結果から、情報通信産業の右肩上がりなのに対し、反対の結果となっていることがわかるでしょう。
労働投下量が下落している傾向にあるため、業務内容の一部をクラウドサービス等に頼るなど、働き方の見直しが必要です。
地価の下落
2023年時点の公示地価は、全国平均で前年を上回る結果となっていますが、今後上昇していく保障はありません。公示価格の決まり方として、取引事例比例法と収益還元法の2つがありますが、いずれも不動産の価値が下落していくと公示価格も下落していく仕組みになっています。
つまり、今後人口の減少など外的要因によって地価が下がることが予想されるでしょう。地価の下落が不安なデベロッパーは、周辺地域の中でも需要の劣らない不動産を取り扱ったり、人口が増える見込みのある地域に投資したりするなど、工夫が必要です。
なぜ不動産業界はデジタル化しにくいのか
不動産業界を生き残るうえで、デジタル化は欠かせない問題です。飲食業界が猫型配膳ロボットを導入したりホテルが無人受付を採用したりする中、なぜ不動産業界のデジタル化は進みにくいのでしょうか?
一般的には、不動産はほかの買い物と比べて多額のお金が動くことが多く、顧客が慎重になりやすいことが要因のひとつとして挙げられます。ネット通販で売買契約を結ぶのには、躊躇いが生じるのも納得でしょう。相手の顔を見て信頼できる人柄や企業なのか、何度もやり取りを重ねたうえで合意に至ることがほとんどです。
そのためには、ネットの文面だけでなく、直接顔を合わせることが必要な場面も出てくるでしょう。
また、不動産は定量的観点から物件を評価することができますが、感性の部分が購入決断の背中を押すことも多いのです。物件の収益計画は定量的観点から導けますが、実際に体感しなければわからない、定性的部分が大きいと言われています。
しかし、最近はIT重説など法の改正もあって、対応できる部分はデジタルに移行しているデベロッパーも増えています。やり取りや内見にかける人手の負担を減らすだけでも、業務が円滑に回しやすくなるでしょう。
デベロッパーの課題解決の方法
さまざまな課題を抱える不動産業界ですが、問題点解決には3つの方法が有効と言われています。
それぞれ詳しく解説していきます。
他業種と連携し新たなサービスを提供
人口減少などのマイナス要因が大きい今の日本では、不動産業界だけに特化せず、他業種と連携し新しいサービスを提供できるようになると、自社の強みとなるでしょう。
例えば、医療や福祉との相性は良く、行政組織と連携することも期待できます。24時間見守りサービスがついた医療・福祉施設は、これからの高齢化社会で需要が伸びる可能性があります。
弊社ではシニアテックマンション向けの「eMamo」というサービスを提供しています。高齢者と家族の連携を図ったりナースコールと繋がったりと、業務効率の改善化にも役立ちます。
前述したように、若者や立地にこだわった物件だけでは他社との差別化が難しくなってくるため、利用用途の幅を広げてみるのもひとつの手でしょう。
課題に沿ったリノベーション
現在の不動産が想定通りの利益を生んでいない場合、自社物件の課題に沿ったリノベーションを行うことも重要です。古民家や古いマンションを新しくするリノベーションは不動産業界でもトレンドですが、住まいから住まいへのリノベーションだけでなく柔軟に対応しなければいけません。
上記の例のように、市場の変化を反映した柔軟なリノベーションが好転のきっかけとなることがあります。人口や年齢層、周辺施設なども加味したうえで検討しましょう。
不動産DXの活用
不動産DXとはIT技術を不動産に使って業務の効率化に期待できるサービスです。シフトや勤怠などを管理するものや不動産仲介に特化した顧客管理のものなど、さまざまな不動産テックが展開されています。業務の一部をデジタル化するだけで、人間が行う処理が減らせるのが魅力です。
弊社では、不動産DXのIoTの部分を担っています。スマートロックをはじめとしたスマートホーム化することで、無人内覧などが叶います。
社会の変化に順応するためには不動産DXが不可欠
長時間労働など不動産業界における課題は働き方にも及びます。人口減少など外的要因も重なって、今後不動産業界に従事する人材の流出は大きな課題となるでしょう。社会の変化に順応するためにも、不動産DXは不可欠となることが予想されます。
なお、弊社でもスマートセルフ内覧システムをリリースしています。
専用アプリ不要で鍵の開閉が叶うため、利用者の負担も少ないのがメリットです。また、不動産会社(仲介会社)の方は、エアコンや照明、鍵の状態をオフィスから確認できるため、現地に確認に行く必要がありません。
そのほかにも、スマートカメラを設置すれば、内覧者の様子を確認できます。
不動産業界の課題を解決し生き残れる企業に成長
不動産業界の課題は、複数のジャンルに分けられます。ひとつの事例が複数の課題を解決できることもあるため、より自社に効果が期待できるサービスを選択する必要があるでしょう。
課題 | 解決策 | 事例 |
人口減少 | ・生き残れる物件に切り替え
・異業種との連携 |
・医療や福祉との連携で高齢化に備える
・課題に沿ったリノベーション |
アナログ | 不動産DX | ・SFAやCRMの活用
・AIを活用した情報収集 |
過労 | 働き方改革 | ・データ化しペーパーレスに移行
・SFAやCRMの活用 ・AIを活用した情報収集 |
労働力不足 | デジタル化 | ・セルフ内覧
・オンラインでの契約締結 |
弊社では、IoTを使った不動産の新しい可能性を見出すことに注力しています。眠っている物件や、人材不足など今後のためにイノベーションが必要だと感じている物件がある場合は、ぜひリンクジャパンにご相談ください。
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