不動産テックとは、不動産と最先端のテクノロジーを組み合わせることで、不動産業界に新たな風を巻き起こそうというものです。
そもそも不動産業界は、世の中にIT化が浸透していても、アナログな商習慣からなかなか脱出できない業界でした。
しかし、海外で広まり始めていた不動産テック(Proptech)が2014年頃から日本でも注目されるようになり、日本政府も不動産業界にかぎらずさまざまな業界でのDXを推進しています。
このような背景の後押しもあって、不動産テックを皮切りに働き方の改善や新しいサービスの創出を目的とし、不動産DXの波が進み始めています。
そこで本記事では、不動産テックでどんな業務をITで効率化できるかをイメージしやすいように、不動産テックが業界にもたらすメリットや不動産テック カオスマップに分類されているサービスを解説します。
また、当社リンクジャパンが不動産DXでお手伝いできるサービスも紹介するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
不動産テックとは?
不動産テックとは「不動産」と「テクノロジー」からなる造語です。
インターネットやAIを駆使した最先端のテクノロジーを駆使することで、不動産業界が長年抱えていた課題を解決し、従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのことを指します。
そんな不動産テックは、アメリカのベンチャー企業から始まりました。
ここからは、不動産テックの始まりや日本より先に進んでいる海外の不動産テックについて見ていきます。
発祥はアメリカのベンチャー企業
インターネットが普及し始めた1990年後半から、検索機能が充実した不動産物件サイトが作られるようになりました。
不動産テックは、インターネットの始まりと共に少しずつ歩んできたといえるかもしれません。
しかし、日本で不動産テックに注目が集まるのはそれからもう少し先の話です。
その一方でアメリカでは、不動産テック関連のベンチャー企業が急成長し始めます。
そのなかでも有名なベンチャー企業のひとつが「Compass(コンパス)」です。
Compasは2012年にニューヨークで設立された不動産仲介を主要業務とする企業。
最先端のテクノロジーを活用した不動産取引マッチングサービスを運営し、業務の効率化や生産性の向上をはかります。
その結果、設立から4年後には評価額440億ドルにまで成長し、今や全米でも有数の不動産テック企業として名を連ねています。
日本より先んじて進む海外のProptech(不動産テック)
日本より先んじて進んできた海外のProptech(不動産テック)は、技術革新や環境変化に応じていくつかのステップを踏んでいて、現在はProptech3.0の時代といわれています。
その歴史をひも解くと、1990年前半ぐらいから始まったProptec1.0は、不動産物件のポータルサイトが続々と登場した時代です。
物件の可視化が行われるようになり、集客拡大へとつながります。
続いて2010年頃から始まったProptech2.0の起点になったのが、シェアリングエコノミーです。
個人・業者問わず、空き物件や空き部屋を宿泊先として利用できるシステムをAirbnbが提供したことで大きな話題となりました。
そして2015年頃から始まり、現在に至るのがProptech3.0。
前述のCompassが運営する不動産仲介マッチングサービスや、「iBuyer」のような物件の買取りをオンライン上で完結できるようなサービスが出始めます。
2020年代には、不動産に対する資金提供をビジネスモデルとした「iFunder」が登場し注目を浴びています。
このように、アメリカではProptech1.0以来、不動産テックが着実に前進している一方で、日本ではProptech1.0の状態でしばらく留まっていました。
日本で不動産テック推進が叫ばれるようになったのは、2014年にAirbnbが日本に上陸したころです。
シェアリングエコノミーを活用した民泊が増えるようになってきたことで、不動産業界でも危機感を持ち始めた結果、不動産テックの流れが興り始めたといったところでしょうか。
不動産テックとDXの違い
不動産テックとは別で、DXも昨今よく耳にする言葉のひとつではないでしょうか。
DXは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。
企業がAIやIoTなどのさまざまなデジタル技術やビッグデータを活用することで、業務の改善にくわえ、新たなビジネスモデルやサービスを創出しようというものです。
不動産テックとDX、どちらもデジタル技術の活用がベースになっている点は同じですが、不動産テックはDXを推進するための仕組みやサービスのことであり、DX推進活動の一部に含まれるものといえるでしょう。
不動産業界で不動産テックやDXが注目されている理由
日本の不動産業界で、不動産テックやDXが注目されている主な理由は4つあります。
それぞれについてくわしく見ていきましょう。
アナログな商習慣がIT化を遅らせている
不動産業界のアナログな商習慣を根付かせている原因のひとつが法律です。
宅地建物取引業法いわゆる宅建法の第35条には、契約事項の重要事項の説明には書面を交付したうえでの説明が義務付けられています。
第37条でも、契約締結時には当事者の氏名等を記載した書面の交付も、同じく義務付けられています。
もちろん、これは契約に関連したトラブルを防ぐために重要な法律ではありますが、紙媒体の利用はデジタル化推進に大きな障害となっていることはたしかです。
この法律は2022年5月18日に改正され、相手の同意があれば書面の交付・押印が省略可能になりましたが、不動産業界のデジタル化は法律の下地がようやくでき始めたところなのです。
仲介業者に偏りがちな情報の不透明さ
法律以外に不動産業界で問題視されているのが情報の不透明さにあります。
市場で取引される商品やサービスの情報が、売り手または買い手どちらかに偏っている状態のことを「情報の非対称性」といいますが、不動産業界では情報を秘匿することで他社と差別化をはかってきました。
そのため、物件情報は仲介業者に偏る傾向にあります。
たとえば同じ物件であっても、仲介業者によっては持っている情報が異なったり、持っていても開示しない情報があったりします。
物件の取引状況や価格などの不動産情報を一元管理しているシステム、レインズ(REINS)を利用できれば、このような問題を払拭できるかもしれません。
しかし、レインズは不動産会社以外閲覧できないので、消費者側にすべての情報が伝わることはないのです。
集約されていない不動産データベース
アメリカの場合、不動産の売り情報をリスト化・共有化して支援するMLS(Multiple Listing Service)という仕組みが発達しています。
日本でもレインズがその仕組みに該当するのですが、物件情報を登録しなくてもとくに罰則はないので、すべての物件情報が登録されているわけではありませんでした。
情報の秘匿性を慣習としてきた不動産業界では、物件のあらゆる情報の登録を避ける傾向にあったのかもしれません。
ただし、近年空き家の増加が問題視されるようになったことから、国土交通省が中古物件取引を円滑に進める施策として、レインズに登録された物件には不動産IDを付与するガイドラインを定めました(2022年3月)。
不動産IDが付与されることにより、同一と認められる物件の取引履歴などが集約されるようになるので、一定の期待はできそうです。
しかし不動産IDは義務化されているわけではなく、各事業者がガイドラインに沿って自主的にひもづけることになっています。
そのため、不動産業者がどのように活用していくかに委ねられてしまっているのが懸念点として残ります。
社会の変化に合わせた新たな付加価値の需要
IT技術の進歩とともに、私たちの生活環境は大きく様変わりしています。
インターネットとスマートフォンの普及により、情報伝達や物流は、今や住んでいる地域に関係なく行き渡るようになってきました。
近年流行したコロナの影響によって、会社に出社しなくても仕事のできる環境が求められるようにもなりましたよね。
不動産業界でも社会の変化に合わせ、以下のようにさまざまな付加価値をもつサービスが生まれています。
テクノロジーの発展により、今までは不可能だったことにくわえ、想像もしなかった分野で不動産サービスを提供できる可能性があります。
社会の変化とともに移り変わる需要をいち早く見つけ出し、最先端のテクノロジーを活用したさまざまな新しいサービスを創出・展開していくことが、より重要になってきたといえるでしょう。
不動産テックが不動産業界にあたえる変化
不動産業界で不動産テックが進むことによって、以下のような変化を期待できます。
- 物件情報の一元管理による情報の見える化
- システム化による業務の効率化
- AIやIoTの活用による生産性の向上
- セキュリティ強化による情報漏えいリスクの削減
物件情報を正しく一元管理できれば、情報の不透明さは解消され、ニーズに合わせた不動産の取引やマッチングが可能になります。
AIやIoTを活用しながら業務にさまざまなテクノロジーを取り入れていけば、業務はより効率的に進められるようになり、生産性も向上するでしょう。
また、セキュリティ強化に力をいれれば、情報漏えいのリスクも削減できます。
不動産業界では、社員の保有していた紙媒体の契約書類流出や、USBや持ち出し可能な端末(ノートPCやスマホ)に保存されていた顧客情報の紛失といった情報漏えい事故がたびたび発生しています。
機密情報の漏えいは、損害賠償沙汰になる大きな事故に発展する可能性があるうえ、事故が発生した時点で社会的信用を失墜する恐れもはらんでいます。
ITを活用したセキュリティ対策を施せば、出先からでも安全に社内のシステムにアクセスできます。
また、簡単には外部に情報を持ち出せない仕組みも構築できるので、情報セキュリティ事故を未然に防げるようになるでしょう。
不動産テックの中心となる最先端テクノロジー
不動産業界に変化をもたらす不動産テックですが、どんなテクノロジーが注目されているのかも押さえておきたいところです。
そこで、現在とくに注目を浴びている最先端テクノロジーを表にまとめてみました。
業務の効率化や新たなサービスを創出する際の参考にしてみてください。
テクノロジー | 特徴 | 実現分野 |
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AI |
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IoT |
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VR・AR |
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ブロック チェーン |
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不動産テック市場で活躍する企業はカオスマップで確認
不動産テック協会では、不動産テックのサービスを体系的にまとめたカオスマップを定期的に公表しています。
このカオスマップを見れば、不動産テックにどんなサービスが展開されているのか、どこの企業へ相談すればよいかがわかるでしょう。
ここでは、当社リンクジャパンも掲載中の不動産テック カオスマップについて説明します。
不動産テック カオスマップのサービス分野
不動産テック カオスマップは、不動産テック業界のプレイヤー(企業やプロダクト)とカテゴリーの関係性を表したものです。
2016年6月に第1版が公開されて以来、定期的にアップデートされ、現在は2022年8月8日公開の第8版が最新です。
マッピングの編集方針やカテゴリーは毎回見直しが行われているので、バージョンによって若干差異があります。
第8版のカオスマップでは、12のカテゴリーが定義され、それぞれのカテゴリーにマッチする企業やサービスがマッピングされています。
また、これらのカテゴリに掲載されるための基準は、前述のAIを始めとした最先端テクノロジーを活用しているサービスやビジネスかどうかです。
カテゴリ名 | 定義 |
---|---|
VR・AR | VR・ARの機器を活用したサービスや、VR・AR化するためのデータ加工に関連したサービス |
IoT | ネットワークに接続されるデバイスで、不動産に設置、あるいは内蔵されるもの。また、それらの機器から得られたデータ等を収集・分析するサービス。 |
スペースシェアリング | 不動産や空きスペースをシェアするサービス。または、そのマッチングができるサービス。 |
リフォーム・リノベーション | リフォーム・リノベーションの企画設計施工、Webプラットフォーム上でリフォーム業者のマッチングを提供するサービス。 |
不動産情報 | 物件情報を除いた不動産に関連するデータを提供、あるいは分析するサービス。 |
仲介業務支援 | 不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、あるいはツール。 |
管理業務支援 | 不動産管理会社等の主にPM業務効率化のための支援サービス、あるいはツール。 |
ローン・保証 | 不動産取得に関するローン、保証サービスを提供・仲介・比較するサービス。 |
クラウドファンディング | 個人を中心とした複数投資者から、Webプラットフォームで資金を集め、不動産へ投融資を行う。もしくは、不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス。 |
価格可視化・査定 | 様々なデータ等を活用し、不動産価格・賃料の査定およびその将来見通しなどを行うサービス、あるいはツール。 |
マッチング | 物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス。 ※シェアリング、リフォーム・リノベーション関連は除く |
物件情報・メディア | 物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム。もしくは、不動産に関連するメディア全般。 |
※参考:不動産テック協会/不動産テック カオスマップ カオスマップ ガイドライン
当社リンクジャパンはカオスマップで「IoT」に
当社リンクジャパンは、カオスマップの「IoT」分野で、2018年に公開された第4版から継続して掲載されています。
スマートリモコンeRemote ProやスマートカメラeCamera2といったIoT製品を提供していることが、この分野で長く掲載され続けている理由のひとつかもしれません。
ただし、当社リンクジャパンが提供しているのはIoT製品だけではありません。
当社リンクジャパンの強みは、当社製品のみならず他社製品もまとめて操作できるアプリ「HomeLink」であり、HomeLinkを軸にさまざまなIoT製品を活用したスマートホーム化サービス「eLife」も展開中です。
以降では、住宅を魅力ある物件にアップデート可能な「eLife」を紹介します。
不動産テックや不動産DXでお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
不動産テックなら事例も多いリンクジャパンの「eLife」で
当社リンクジャパンの「eLife」は、今までにないスマートホームを実現するサービスです。
公開されているスマートホーム物件のなかでも、当社リンクジャパンのeLifeは35%を超えるシェアを占めています。
この実績から、業界でもっとも採用されているスマートホームサービスと自負しています。
eLifeによって実現できることは多種多様にありますが、本記事では以下の3つに絞ってご紹介します。
新たな付加価値をそなえた物件で成約率・入居率アップ
物件をスマートホーム化するにあたって、やはり気になるのはその費用対効果ではないでしょうか。
eLifeであれば、賃貸なら1室数万円の投資で入居率最大60%アップを期待できます。
後付け可能なスマートリモコンや人感・開閉センサーを取り付けることで、セキュリティレベルの高い安全な物件にアップデートできますし、単身女性への訴求力もアップします。
また、分譲マンションや戸建ての売買でも、eLifeのフルセットはわずか10万円代前半から導入可能です。
導入費用の何倍もの付加価値をそなえたスマートホーム物件は、セールスポイントとしてアピールしやすく、成約率や単価アップにも貢献できます。
お客様のニーズに合わせたカスタマイズが可能
eLifeは、対応室数やどこからどこまでスマートホーム化するかを、ご相談に応じてカスタマイズできます。
お客様のニーズに合わせた柔軟なリノベーションを提案し、他とは一味違う物件へのアップデートをお手伝いします。
他物件との差別化ができれば、新たなブランドを構築することも可能です。
今の時代に見合った新しいライフスタイルを提供するスマートホーム実現のために、eLifeを活用してみてください。
無人内覧システムの導入で働き方改革も実現
eLifeであれば、無人内覧システムも実現可能です。
スマートロックやスマートカメラをそなえた物件であれば、内覧の受付から終了までを無人で対応できます。
担当者が同行しなくても内覧できれば、人手不足解消や業務時間短縮につながるので、無人内覧システムが当たり前な時代も、そう遠くはない未来にまで近づいていそうです。
当社リンクジャパンが無人内覧システムでとくにこだわっているのは、エアコンの自動ON・OFF機能。
内覧者の到着にあわせ、あらかじめ部屋の温度を調節しておけば快適に内覧できますし、内覧終了とともに自動でOFFになるので、消し忘れの心配もありません。
以下の記事でも、リンクジャパンの無人内覧システムをくわしく紹介しているので、あわせて読んでみてください。
不動産テックでお悩みならリンクジャパンにご相談を
本記事では、以前より不動産業界で注目されてきた不動産テックについて解説しました。
アナログな商習慣が残る不動産業界では、法律的に難しい部分もあり、デジタル化が進みづらい傾向にあります。
ただし、デジタル化推進に向けた法改正も進み始めたので、不動産テックでDXを推進する流れは、今後加速していくことでしょう。
当社リンクジャパンは、不動産テック カオスマップで「IoT」分野の一員として掲載されています。
さまざまなIoT製品の操作が可能なHomeLinkを軸に、スマートホーム化を実現する「eLife」を提供しています。
不動産DXや不動産テックでお悩みなら、ぜひリンクジャパンにご相談ください。