さまざまな業界がITを取り入れた業務に取り組むなど、仕事においてデジタル化が進んでいます。不動産業界も例外ではなく、物件紹介から内見や契約までオンラインで完結している企業も少なくありません。
本記事では不動産のオンライン化による企業が得られる恩恵、オンラインならではの接客の心得を紹介します。今後、不動産DXを検討している企業の方はぜひ参考にしてください。
不動産のオンライン化とは?
不動産のオンライン化では、従来では対面で行っていた不動産の物件紹介や内見、契約まで一度も店舗に訪れなくても行えるようになります。2019年から世界的に蔓延している新型コロナウイルスにより、オンライン化に向けた法整備も加速。
その結果、不動産取引は賃貸、売買に関わらずこれまでは契約書のやり取りは書面で、重要事項説明(重説)は対面で行う必要がありましたが、現在いずれもオンラインで完結できるようになりました。
なお、不動産情報サイト事業者連絡協議会の調べによると、非接触型の接客で住まい探しをしたいという人の割合は多く、とくに重説は、賃貸・売買ともにオンラインで完結させたい意向であることがわかります。
一方、内見は住む前に自身の目で行いたいと考える人が多いため、オンラインと対面のハイブリッド接客が重要になるでしょう。
出典:国土交通省「不動産取引のオンライン化に関する取り組みの現状」
「オンラインによる重要事項説明」(IT重説)
不動産情報サイト事業者連絡協議会「「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果」
オンラインでできること
不動産DXにあたって、オンラインでできることと合わせて、自社ではどこまでITに業務を任せるのかの判断が重要です。ここでは、オンラインでできることと人がサポートすべき観点を紹介します。
物件の相談
これから家を探す人は、まず条件に合う物件があるか探します。最近ではインターネットから条件入力をし、希望に合った家を探すことが主流ですが、一般に公開されていない物件を紹介して欲しい人も少なくありません。
物件をオンライン掲載する際は、写真点数にも気をつけましょう。
最近では、LINEやInstagramなどのSNSを通して相談に乗る不動産会社も増えており、中には店舗を持たない不動産会社もあります。なお、店舗の維持費分値引きできるなど利用者にとってメリットを与えられるため、初回相談が増えやすいのも特徴です。
自社がどこまでITでカバーするのか、使う連絡ツールはどうするのかなど、使うシステムと、それに対応できる人材を育てておく必要もあるでしょう。
スムーズな物件紹介ができるシステム作りは、自社を選んでもらうための重要事項となるでしょう。
出典:不動産情報サイト事業者連絡協議会「「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果」
内見
内見はオフラインを希望する声が多いものの、遠方への転勤や急な引っ越しの場合はオンラインですませたい人も珍しくありません。その場合、押し入れの中や収納など細かい箇所も写しておきましょう。
また、最近では「セルフ内覧」と呼ばれる、不動産会社の担当が不在でも内見できるサービスも普及しています。
セルフ内覧とは、不動産会社や大家がタイムパスワードを発行し、内覧希望者は専用アプリやブラウザ上からパスワードを入力、スマートロックが開錠される仕組みです。立ち会う担当者が不要になるため、人材不足の不動産業界にとって、メリットとなるでしょう。
また、セールストークが苦手な利用者にとってセルフ内覧はメリットとなりますが、その反面、その後の連絡やサポートシステムが整っていないと、契約までの案内がスムーズに進みにくいので注意が必要です。
詳しくは下記記事でも紹介しています。セルフ内覧導入検討中の方は、合わせて読んでみてください。
入居申し込み・重要事項説明・契約
改正宅建業法の施行により、入居の申し込み、重要事項説明、契約までオンラインで行えるようになりました。
なお、ITを使った重要事項説明(以下、IT重説)では、事前に宅建士の記名押印された重要事項説明及び添付書類が契約者の手元にある状態での説明が必要とされています。
説明開始前には手元に書類があること、映像や音声に問題がないこと、相手が契約者本人であることなどを宅建士が確認し、自らの宅建士証をカメラにかざし契約者に確認してもらうなど、オンラインならではの工程が必要です。
また、途中で通信障害があった場合などの対応も必要になるため、対面とは違った接客マニュアルを用意しておくと安心です。IT重説は録画等を残しておけるため、トラブル回避のメリットもあります。
さらに、IT重説にくわえて、電子署名サービスなどを利用し契約を交わすこともできます。電子契約を採用する場合は、契約者だけでなく大家や保証会社、賃借人など、契約に関わるすべての人やオンラインで対応できる必要があります。
また、クラウド管理やIT契約に不慣れなオーナー様へは代理契約を結ぶなど、事前に業務フローを再考しなければいけません。
出典:国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」
【事業者】不動産のオンライン化導入のメリット・デメリット
不動産取り引きのオンライン化は、事業者にとって大きなメリットがあります。
【メリット】人件費削減・効率化
オンライン化すると、人件費削減と業務の効率化が叶います。対面で物件を紹介する場合、1人の顧客に対して1人の担当者が対応しなければいけません。
しかし、LINEやメールなどのツールを使って物件を紹介する場合、1人の担当者が同時にたくさんの顧客に提案できるため、少ない労働力で業務を回すことができます。
また、人件費だけでなく紹介物件書類の印刷も不要になるため、経費削減にも繋がるでしょう。
【メリット】商圏の拡大
対面対応のみの場合、物件探しや内見、契約までを考えると、今住んでいる場所から通える距離にある不動産屋を選ぶことが一般的です。
オンライン化すると来店の必要がなくなるため、遠方からの引っ越しなど、新たな層の顧客獲得に有効です。
【デメリット】お客様の通信状況によって不具合が生じる
オンラインでのやり取りは、お客様の表情や意思が汲み取りにくいシーンもあるでしょう。
これまでにはなかったさまざまなトラブルを想定しておく必要があるでしょう。
【利用者】不動産のオンライン化導入のメリット・デメリット
オンライン化によるメリットは、事業者だけでなく利用者にもあります。オンラインの魅力を感じてもらえると利用しやすくなるため、顧客へのメリットアピールも重要です。
【メリット】自宅にいながらお部屋探しが完結
今までは住宅情報サイトに掲載されている物件のみ閲覧でき、その後は来店して掲載されていない物件や条件にあった物件を紹介してもらう必要がありました。
しかし、オンラインでは掲載されている物件の紹介はもちろん、一般公開していない物件もオンラインで紹介してもらえます。
メールだけでなくSNSを使ったやり取りもできるため、自宅にいながら簡単に理想の住まいを探せるのは魅力でしょう。
【メリット】不動産屋が開いていないときでも対応できる
不動産屋の多くは水曜日に定休日を設けており、これまで店舗が開いていない日は内見できませんでした。オンライン化によりセルフ内覧が実現することで店舗や担当者の休みによって内見が制限されないため、自身のタイミングで内見可能です。
また、仕事終わりに内見したい人や連絡を取りたい人もオンラインで行うことで問題が解消されます。日にち、時間を選ばず利用者の好きなときに家探しができる点はメリットとなるでしょう。
【デメリット】音や匂いまでは伝わらない
物件探しのオンライン化によるデメリットで挙げられるデメリットの多くは「オンライン内見」に関するものです。セルフ内覧と異なりオンライン内見は、自身が物件に足を運ぶことなく契約することになるため、採寸ができないことや周りの音や匂いまで伝わりません。
契約後のマイナスギャップを防ぐためにも、なるべくセルフ内覧、もしくは対面で内見するのがおすすめです。
遠方からの引っ越しなど、自身で見られない場合は、担当者に部屋以外に周辺地域や隣人など、聞いておくと良いでしょう。
不動産業界のオンライン化は社会問題解消にも有効
不動産業界のDXが進まない理由のひとつに、家選びは可視化できる条件だけでなく当事者の感性の部分が大きいことが挙げられます。そのため、最終的には顧客に寄り添った接客、提案が重要です。自社の顧客層や営業スタイルに合わせてオンライン化もアレンジするのが、双方にとって良い結果となるでしょう。
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