スマートホームの世界は日々進化しており、現在その中心に位置するのがスマートホーム共通規格の「Matter」です。
最新バージョンのMatter 1.2では、対応デバイスの追加などにより、スマートホームの標準化をさらに進めています。
しかしMatterにはまだ課題が存在し、ユーザー体験のさらなる向上が必要なことも事実です。
そこで本記事では、Matterの最新動向と現状のデメリットについて詳しく解説します。
なぜMatterに注目が集まるのか?
近年スマートホーム技術の普及が進む中、異なるメーカーやブランドのデバイスが互いに連携し、一体的に動作することの重要性が高まっています。
この背景から、Apple・Google・Amazonなどの大手IT企業が共同で規格化を進めてきた「Matter」は、スマートホームの共通規格として注目を集めています。
Matterの最大の特徴は、異なるブランドやプラットフォーム間での互換性を実現すること。
これにより、消費者は自由に製品を選び、異なるブランドのデバイス間でのスムーズな連携が可能です。
開発者やメーカーにとっても、一つの規格に対応するだけで多くのプラットフォームやデバイスとの互換性を持たせることができるため、開発の効率化や市場拡大が期待されています。
さらに、Matterはオープンソースであり、その開発プロセスや技術仕様が公開されています。
そのため、多くの企業や開発者が参加し、規格の進化や改善を共同で進められるのです。
このような特徴から、Matterはスマートホームの未来を形成する鍵として、多くの関心を集めています。
Matter対応家電とその動向
Matterの登場以降、多くの家電メーカーやデバイス製造企業が、この新しい共通規格に対応した製品の開発やリリースを進めています。
なかでも、照明・リモコン・エアコンなど、日常生活に欠かせない家電製品でMatter対応が進められているのが特徴的です。
日本の市場においても、Matterに対応したスマートホーム製品への関心が高まっています。
特に、スマートリモコンのニーズが高い日本でMatter対応が進むことにより、さまざまなメーカーのデバイス間連携がよりスムーズになることが期待されています。
その一方で、日本と海外のスマートホーム市場のニーズの違い、例えばリモコン周りの機能の違いなど、課題が存在していることも事実です。
Matter対応製品の普及は、まだ時間がかかるとも言われており、その実際の動向やデメリットをしっかりと把握することが重要です。
現時点でのMatter対応製品のデメリット
Matterはスマートホームの共通規格として注目されている一方で、現時点ではいくつかのデメリットや課題が指摘されています。
ここでは、以下に示す5つのデメリットについて解説します。
対応デバイスがまだ限定的
Matterの共通規格は多くのデバイスに対応することを目指していますが、現状では対応デバイスが限られています。
最新バージョン1.2で冷蔵庫、ロボット掃除機などの9種類が追加され、対応デバイスの範囲は広がりましたが、あらゆるデバイスがMatterに対応しているわけではありません。
そのため、Matter対応・未対応のデバイスが混在し、操作するアプリを使い分けなければならないケースがあり得ます。
Matter 1.2までの対応デバイス | Matter1.2で追加された対応デバイス |
---|---|
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参考:Matter 1.2 Arrives with Nine New Device Types & Improvements Across the Board
対応家電は一部の操作が未対応
デバイスのみならず、操作に関しても同じことがいえます。
Matter対応製品は、全ての操作をサポートしているわけではありません。
以下は、Matter1.1での音声操作の比較表です。
音声操作の機能比較 | ||||
---|---|---|---|---|
家電・シーンなど | 操作 | Amazon Alexa |
Google Home |
Matter連携 |
エアコン | ON/OFF | 〇 | 〇 | 〇 ※冷暖房 |
温度操作 | 〇 | 〇 | 〇 | |
風量 | × | 〇 | × | |
風向 | △ | △ | × | |
照明 | ON/OFF | 〇 | 〇 | 〇 |
調色 | 〇 | 〇 | × | |
調光 | 〇 | 〇 | × | |
常夜灯 | 〇 | × | × | |
テレビ | つけて | 〇 | 〇 | 〇 |
チャンネル | 〇 | 〇 | × | |
音量 | 〇 | 〇 | × | |
消音 | 〇 | 〇 | × | |
地上波/CS | 〇 | 〇 | × | |
テレビのビデオ操作 | 再生・停止 | 〇 | × | × |
次動画 | 〇 | × | × | |
シーン | 〇〇をオン | 〇 | 〇 | × |
Matter1.1における主要デバイスと音声操作の機能比較表
Matter連携の列を見ていただければ、Matter対応製品の操作はかなり限定的であることがわかるでしょう。
そのため、以前は普通に使えていた操作が、Matter対応アプリでは利用できないケースがあります。
Matter1.2でエアコンの風量・風向制御ができるルームエアコンがサポート対象になったように、今後のバージョンアップで徐々に改善されていく見込みはあります。
しかし、UXの観点ではまだ課題がある状態といわざるをえません。
ペアリングやセットアップの課題
ペアリングやセットアップなど、デバイスの初期設定にも課題があります。
それは、現在のMatterのバージョンでは、2.4Ghz帯の利用を前提としていることです。
そのため、5GHzのWi-Fiを使用しているスマートスピーカーは、Matter対応のために2.4GHzにWi-Fi設定を変更しなければなりません。
Matter対応デバイスのペアリングや、初期設定で苦戦しているユーザーの口コミが、たびたび見られるのはこのためでしょう。
また、動画視聴などで通信スピードが求められている今日、遅くなる2.4GHzにわざわざ切り替える人は少ないかもしれません。
この辺りはユーザーの使い勝手に直結する話なので、早急な改善が望まれるデメリットといえるでしょう。
日本と海外でのスマートホーム家電ニーズの違いによる課題
日本と海外でのスマートホーム市場のニーズの差も、課題を生み出す要因のひとつとなっています。
日本のスマートホーム市場では、スマートリモコンのニーズが高いのに対し、海外ではそのニーズが低いのです。
たとえば、ホームセキュリティの観点でニーズの高いアメリカなどでは、日本製のリモコンほど機能が豊富ではありません。
そのため、リモコン機能はあまり重要視されず、Matter対応であっても今まで操作できていたリモコン機能を使えなくなる可能性があります。
このような海外と日本の市場の違いが、Matterに対するユーザーの満足度を低下させてしまう懸念があります。
Matter対応製品の価格や開発コストの問題
Matter対応の製品は、規格の標準化を主導するCSAにMatter認証費用を支払う必要があり、その分が製品コストに上積みされることになります。
また、Matter対応製品が広く普及するようになるまでは、Matter対応のための開発コストも削減することは難しいでしょう。
そのため、同じ機能を備えた製品であってもMatter対応製品のほうが価格は高くなる傾向にあります。
価格はメーカーの生産台数や販売戦略によるとはいえ、Matter対応製品が世の中に浸透するまではこの傾向が続く可能性が高いです。
Matterの将来性:消費者と家電メーカーの視点
Matterはスマートホームの未来を大きく左右する要素として、消費者とメーカーいずれの立場からも注目されている規格です。
それぞれの立場から、Matter対応製品の選択やIoT化の方針について考えてみましょう。
消費者はMatter対応製品を選ぶべきか
Matter対応製品は、異なるメーカーやプラットフォーム間での互換性を持つという大きなメリットがあります。
しかし、前述したような現状のデメリットや制限も無視できません。
消費者としては、自身のニーズや使用環境を考慮する必要があるでしょう。
そのため、Matter対応製品の購入を検討する際には、機能・価格・サポート体制などをしっかりと比較検討することが重要です。
家電メーカーは製品のIoT化でMatter対応必須?
家電メーカーにとって、製品のIoT化は現在の大きなトレンドのひとつといえます。
そしてMatter対応も、製品のIoT化における検討要素のひとつとなります。
しかし、Matter対応による開発コストやもともと備えていた機能の確保など、さまざまな課題にどのように対応するかを検討しなければなりません。
メーカーは、「市場のニーズ」「競合との差別化」「開発リソース」などを総合的に考慮し、Matterに対応するかどうかの方針を決定する必要があるでしょう。
Matterに関する具体的なメリット・デメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
まとめ:未だ発展途上のMatterは、今後も動向の注視が必要
Matterはスマートホームの共通規格として注目を集めていますが、まだ発展途上の段階です。
現状のMatter対応製品には、本記事で解説したようなさまざまなデメリットが存在します。
とはいえ、Matterの将来的な可能性は非常に大きく、その動向を注視することは重要です。
当社リンクジャパンは、ユーザーの真のニーズを重視し、Matterの動向を慎重に見守っています。
Matter対応や製品のIoT化のご相談は、ぜひリンクジャパンにお問合せください。
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