Matter 1.2がリリース!バージョンアップ情報や今後の展望を解説

Matter 1.2がリリース!バージョンアップ情報や今後の展望を解説 GUIDE

スマートホームの未来を担う共通規格「Matter」がバージョン1.2へと進化しました。

このアップデートは、より多くのデバイスのサポートと機能改善を約束し、ユーザー体験の向上を目指しています。

しかし、まだ解決すべき課題も残っていることも事実です。

そこで本記事では、Matter 1.2のリリース内容現状の課題に加え、今後の展望を掘り下げていきます。

Matterのバージョン1.2がリリース

2023年10月24日、スマートホーム共通規格Matterがバージョン1.2へアップデートされました。

1.1のアップデートでは開発者とデバイス向けの強化が中心でしたが、1.2ではスマートデバイス間の互換性を高め、ユーザーがよりシームレスな体験ができることを目的としています。

ロボット掃除機を始めとして、9種類のデバイスが新たに対応したことは大きな前進と言えるでしょう。

しかし、あとで詳しく触れますが、スマートカメラのように需要の高い一部のデバイスがサポートされていないなど、いまだ課題をいくつか抱えていることも事実です。

これをプラスに捉えるならば、1.2はMatterの進化過程における一時的なフェーズであり、統一規格としてのポテンシャルを示していると言えるかもしれません。

Matterが1.2にバージョンアップ

Matter 1.2のアップデート内容

Matter 1.2では、おもに3つの観点でアップデートが施されています。

それぞれについて詳しくみていきましょう。

新たに9種類のデバイスが対応

Matter 1.2のリリースによって新たに9種類のデバイスが対応することになりました(表1参照)。

特に、家事全般に関わる冷蔵庫・食洗機・洗濯機・ロボット掃除機がサポート対象になったため、Matter対応製品が中心のスマートホーム環境を容易に実現できることが期待されます。

Matter1.2で追加された対応デバイス 対応内容
冷蔵庫 冷蔵庫の温度制御と監視を基本機能として提供し、特定の食品専用冷蔵庫(ワインセラーやキムチ専用など)にも対応を拡大。
ルームエアコン 既存の空調制御システム(HVAC)とサーモスタットに加え、ルームエアコンも新たにサポート。温度調節とファンモードの制御が可能。
食洗機 リモートでの操作開始や進行状況の通知機能を備え、給排水や温度、ドアロックの異常を知らせるアラーム機能も搭載。
洗濯機 洗濯サイクルの完了通知をMatter経由で受け取れる。乾燥機は今後のアップデートで対応予定。
ロボット掃除機 リモートスタートや進行状況の通知に加え、乾式・湿式の清掃モードやブラシの状態・エラー報告・充電状況などの詳細情報を提供可能。
煙および一酸化炭素警報 音声や視覚による警報に加え、バッテリー状態や寿命の通知、セルフテスト機能を備えている。さらに、一酸化炭素濃度の検知もサポート。
空気質センサー 以下の粒子を検知し、空気質指数(AQI)情報を提供可能。

  • PM1、PM2.5、PM10、CO2、NO2、VOC、CO、オゾン、ラドン、ホルムアルデヒドなど
空気清浄機 空気品質センサーを利用して情報を提供。ファンやサーモスタットの機能を含み、HEPAフィルターや活性炭フィルターの状態監視も可能。
扇風機 個別のデバイスタイプとしてサポートされ、新しいモードや動き、気流の方向や速度の調節機能が強化。

表1.Matter1.2で追加された対応デバイスの詳細
参考:Matter 1.2 Arrives with Nine New Device Types & Improvements Across the Board

開発者ツールの改善

Matter 1.2では、スマートホーム製品の開発者が製品をより早く市場に出せるよう、開発に関わるツールが改善されました。

  • SDK(ソフトウェア開発キット)の改善:
    Matter 1.2のSDKの対応プラットフォームが拡大。Matter対応製品の開発に自由度が増え、新たな対応デバイスの開発効率アップが期待される。
  • テストハーネスの強化:
    テストハーネスは、製品がMatterの仕様に正しく準拠しているかを確認するための重要なツール。このツールはオープンソースとして提供され、開発者は自由にアクセスして改善に貢献したり、常に最新の機能やバグ修正を含むバージョンで製品をテストしたりできるようになった。

これらの改善により、Matter対応のスマートホーム製品が、より迅速かつ高品質で消費者の手に届くようになることが期待されます。

SDKやテストハーネスの改善によりMatter対応製品開発の効率化が期待される

その他UI/UXに関わる改善

Matter 1.2では、ユーザーインターフェース(UI)ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上にも焦点を当てています。

おもな改善点は以下のとおりです。

  • ドアロックの機能強化:
    ヨーロッパ市場向けに、ラッチとボルトの組み合わせを持つドアロックの機能が強化された。
  • デバイスの外観の説明:
    デバイスの色や仕上げなどの外観に関する情報が追加され、ユーザーがアプリケーション上でデバイスを識別しやすくなった。
  • セマンティックタグの導入:
    デバイスの配置と機能を示す新しいセマンティックタグが導入され、ユーザーが複数のデバイスを一貫して理解しやすくなった。例えばセマンティックタグを使うことで、リモコンの各ボタンの位置と機能を明確に示すことができる。
  • デバイスの動作状態の記述:
    デバイスがどのようなモードで動作しているかを表す汎用的な記述方法が導入。将来的に新しいデバイスタイプが追加された際にも、異なるクライアントアプリケーション間で基本的なサポートを提供することが容易になった。

これらの改善は、スマートホームデバイスの互換性と操作性を向上させ、ユーザーがより快適にスマートホームを利用できるようにするためのものです。

Matter 1.2によって、新しいデバイスが市場に出たときにも、既存のシステムとスムーズに統合できるようになることが期待されます。

Matter 1.2でも残る課題

Matter 1.2は多くの進歩を遂げたものの、以下に示すようないくつかの課題が残っています。

それぞれについて詳しくみていきましょう。

 

限定された対応デバイス:スマートカメラは未対応

Matter 1.2では、新たに多くのデバイスカテゴリがサポートされましたが、スマートカメラはまだそのリストに含まれていません

セキュリティを重視するユーザーにとって、スマートカメラは家庭内の安全を守る上で不可欠な存在です。

セキュリティの観点のみならず、小さなお子さんやペットの留守番、あるいは要介護者の見守りなど用途範囲が広いため、スマートデバイスのなかでも重要なデバイスとも言えます。

スマートカメラ未対応の現状がMatter普及への障壁のひとつになる、というのはMatter1.0リリース当初から懸念されていることです。

スマートカメラにかぎらず、Matter対応・未対応のデバイスが混在する環境では、操作するアプリを使い分けなければならないケースが出てきます。

Matterがスマートホーム共通規格として普及するためには、Matter対応デバイスのみでスマートホーム環境を構築できる状況になることが不可欠であり、さらなる対応デバイスの追加が望まれています。

今まで可能だった操作が未対応

Matter 1.2においては、Matter対応前は可能だった一部の操作がサポートされていないという問題が指摘されています。

これには、特定のデバイスでの細かい設定変更や、複雑なシナリオの実行が含まれる場合があります。

たとえば、複数の家電やデバイスを特定の時間に自動で操作するといった、ユーザー独自の複雑なカスタマイズ操作です。

以前は普通に実行できていた操作がMatter対応アプリで利用できなければ、ユーザーは不便さを感じてMatter対応製品の利用を諦める可能性があります。

今後のバージョンアップで対応操作が拡大するなど、徐々に改善されていくことを期待したいところです。

ただし現状の公開資料だと、バージョン1.2によって対応できる操作が増えたのかどうかなどの詳細を掴みきれておりません。

本課題の資料として、バージョン1.1における音声操作の機能比較表を以下に載せておりますが、あくまでも参考として留め置きください。
※今後情報が入り次第、表を更新する予定です。

音声操作の機能比較
家電・シーンなど 操作 Amazon
Alexa
Google
Home
Matter連携
エアコン ON/OFF ※冷暖房
温度操作
風量 × ×
風向 ×
照明 ON/OFF
調色 ×
調光 ×
常夜灯 × ×
テレビ つけて
チャンネル ×
音量 ×
消音 ×
地上波/CS ×
テレビのビデオ操作 再生・停止 × ×
次動画 × ×
シーン 〇〇をオン ×

参考:表2.Matter1.1における主要デバイスと音声操作の機能比較表

セットアップミスにつながるWi-Fi2.4GHz帯の利用

Matterでは、Wi-Fi2.4GHz帯の使用を前提とするデバイスのセットアップが課題としてあります。

それは、ユーザーが5GHz帯のWi-Fiネットワークを使用している場合、Matter対応デバイス用に2.4Ghz帯に変更しなければならないことです。

この制限は、セットアップミスにつながる可能性があります。

Matter対応デバイスを購入したユーザーの口コミには、ペアリングや初期設定で苦戦しているものが多く、その原因は2.4GHz帯への変更によるものと思われます。

そもそも、動画視聴などで通信スピードが求められている今日、遅くなる2.4GHzにわざわざ切り替える人は少ないかもしれません。

利用可能なWi-Fi帯域の課題はMatterにかぎった話ではありませんが、Matter対応デバイスで5GHz帯でもスムーズにセットアップできるようになれば、Matterが広く普及するきっかけになりそうです。

また、ユーザーの使い勝手にも直結する話であり、セットアップの難しさはストレスも溜まりやすいので早急な改善を期待したいところでしょう。

Matterの今後の展望

ここまでMatter1.2のバージョンアップ内容と課題についてみてきましたが、今後のバージョンアップでより改善されていくことは間違いありません。

ここでは以下の観点で、Matterの今後の展開を確認しておきましょう。

2024年で予定されているバージョンアップは2回

Matterは2022年10月にリリースされて以来、2023年5月の1.1へのバージョンアップを経て、リリースから1年後にバージョン1.2に進化しました。

matter 進化

表3.Matter1.0から1.2の変遷

2024年には、大きなバージョンアップが2回予定されていることをCSAが公表しています。

これらのアップデートには、デバイスの互換性の拡大や、ユーザーインターフェースの改善、セキュリティの強化などが含まれるでしょう。

例えば、現在サポートされていないスマートカメラや高度なセンサー類が新たに対応デバイスに加われば、ユーザーはより多様なスマートホーム環境を構築できるようになります。

これらのアップデートは開発者にとっても、より多くのMatter対応製品を世に送り出す機会を生み出すきっかけにもなるでしょう。

具体的な時期や詳細な内容はCSAの発表を待つしかありませんが、スマートホーム市場の成長をより加速化するようなアップデートが期待されます。

日本国内でのMatter対応に関する動き

日本の住宅事情に適したコンパクトなデザインや、日本特有の生活習慣にあわせた機能を持つデバイスなど、日本のニーズにあわせたデバイスが販売されれば日本の家庭でもMatter対応製品やスマートホームの普及が進むはずです。

日本国内でもMatterに関連する注目すべき動きが出てきました。

それは、Matterと日本で広く使われている「ECHONET Lite」のデバイスをつなぐブリッジ機能をユビキタスAI社が開発したことです。

この機能はECHONET Lite対応のソフトウェア開発キットに組み込まれ、2023年10月13日から提供が始まっています。

ブリッジ機能を使えば、Matter規格をサポートしていないECHONET Liteのデバイスも、Matter規格のスマートスピーカー(Amazon AlexaやGoogle Home等)から操作できるようになるのです。

ECHONET Liteなどの国内規格とMatterの連携は、日本における既存のスマートホーム製品との互換性を向上し、ユーザーの選択肢も広がることが予想されます。

この動きが、日本におけるスマートホーム市場の普及を促進する重要なステップとなるかもしれません。

まとめ:Matter 1.2以降ではUI/UXのさらなる向上を期待

Matter 1.2のリリースは、スマートホーム業界における大きな一歩ですが、完全なる成熟には至っていません。

新たに対応したデバイスの種類の拡大や開発者ツールの改善は、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上に寄与しているのは確かです。

しかし、一部のデバイスや操作の未対応など、解決すべき課題も残されています。

これらの課題は、今後予定されているバージョンアップでの改善が望まれます。

また日本国内に目を向けると、ECHONET Liteなどの既存規格との連携が、日本のニーズにあったスマートホーム環境の実現につながることを期待したいところです。

当社リンクジャパンは、ユーザーの真のニーズを重視しながら、将来性の高いMatterの動向を慎重に見守っています。

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