近年、地球温暖化や省エネルギーへの関心が高まる中、住宅業界では「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」が注目を集めています。
ZEH基準を満たす住宅は、高断熱・高気密の住宅設計によって快適性を損なうことなく省エネを実現した住宅ですが、健康面にも重要な役割を果たします。
日本では、政府が第5次エネルギー基本計画で、以下の目標を掲げているほどです。
住宅については、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す。
医療が発達し、人生100年時代といわれる今日、健康にも好影響のある住宅環境は欠かせません。
そこで本記事ではZEH住宅の基本から関連する補助金制度、さらにはZEHを実現するためのソリューションをわかりやすく解説していきます。
ぜひ最後まで目を通してくださいね!
ZEH住宅とは?
まずはZEH住宅の基本的な特徴や、さまざまな基準を押さえておきましょう。
健康と環境に配慮した次世代住宅
ZEH住宅は、高断熱・高気密の建物構造により、室内の温度変化を抑えて快適な住環境を維持できる住宅です。
そのため、温度変化による体調への悪影響を軽減し、ヒートショックのリスクを低減することが可能です。
また、高性能な換気システムを導入することで、室内の空気の状態を適切に保ち、シックハウス症候群などの健康被害を防ぐことにも役立ちます。
省エネ設計のZEH住宅は、環境負荷の低減にも大きく貢献します。
化石燃料の消費を抑制し、二酸化炭素排出量を大幅に削減可能です。
くわえて、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用することで、エネルギーの地産地消を実現し、環境への負荷をさらに低減できるのです。
このように、ZEH住宅は居住者の健康や快適性を損なうことなく、環境にも優しい住まいを実現します。
単に省エネを追求するだけでなく、人と地球に配慮した、持続可能な住宅の形といえるでしょう。
ZEH住宅は、これからの時代に求められる、まさに次世代の住宅スタイルなのです。
ZEH住宅の基準と区分
ZEH住宅には、一定の基準が設けられており、その達成度合いによっていくつかの区分が存在します。
経済産業省が定めるZEHの基準では、以下の3つの要件を満たすことが求められています。
- 外皮の断熱性能等を大幅に向上させること
- 高効率な設備システムを導入することで、一次エネルギー消費量を削減すること
- 再生可能エネルギーを導入することで、年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロ以下となること
一次エネルギーとは、石油・石炭・風力・太陽光など、自然界の物質から直接得られるエネルギーのことです。
この基準を満たすZEHにくわえ、省エネ住宅は以下のように5つの区分が定義されています。
区分 | 必要な要件の概要 |
---|---|
ZEH | 前述の3要件をすべて満たした住宅 |
ZEH+(ゼッチプラス) | ZEH要件にくわえ、省エネ基準の一次エネルギー消費量を25%以上削減し、より高度な省エネ性能を実現した住宅。 再生可能エネルギーの自家消費量を増やすことが求められる。 |
次世代ZEH+ | ZEH+の基準を満たしつつ、蓄電システム・燃料電池・V2H充電設備・太陽熱利用温水システムなどのうちを1つ以上を導入する必要がある。 |
次世代HEMS(ヘムス) | 太陽光発電の自家消費率を更に拡大させるため、AIやIoTを活用し、太陽光発電システムや蓄電池などの最適制御を行うHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)。 |
LCCM住宅 | LCCMは、ライフサイクル・カーボン・マイナスの略。 建設から解体までのライフサイクル全体で、CO2排出量を上回るCO2削減を実現する住宅。 長寿命化、省エネ性能の向上、再生可能エネルギーの活用などにより、環境負荷を最小化する。 |
これらの区分は、住宅の省エネ性能や環境性能を評価する基準となっています。
本記事では、これらの区分のいずれかに該当する住宅のうち、ZEH・ZEH+・次世代ZEH+の基準を満たす住宅を「ZEH住宅」と総称して説明します。
ちなみに集合住宅の場合、マンションの頭文字Mをとった「ZEH-M(ゼッチマンション)」という区分になります。
Nearly ZEHやZEH Orientedとの違いは?
ZEHには前述以外の区分として、Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)とZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)があります。
Nearly ZEHとZEH Orientedは、ZEHと基準はほとんど一緒ですが、一次エネルギー消費量削減率の基準がZEHよりも緩くなっています。
区分 | 一次エネルギー消費量削減率 | |
---|---|---|
省エネのみ | 再エネ等を含む | |
ZEH | 20%以上 | 100%以上 |
Nearly ZEH | 20%以上 | 75%以上100%未満 |
ZEH Oriented | 20%以上 | なし |
これは、Nearly ZEHとZEH Orientedが、以下のように再エネ導入が困難な地域の住宅を対象にしているためです。
区分 | 対象地域 |
---|---|
Nearly ZEH |
|
ZEH Oriented |
|
Nearly ZEHやZEH Orientedは、完全なZEHの実現が難しい環境でも、高度な省エネ住宅を実現するために必要な基準といえるでしょう。
ZEH住宅の5つのメリット
ZEH住宅には、以下に示す5つの主要なメリットがあります。
それぞれのメリットについて、具体的に見ていきましょう。
光熱費の削減
ZEH住宅は、高断熱・高気密の建物構造により、冷暖房の負荷を軽減可能です。
外気温の影響を受けにくく、室内の温度変化を抑えられるため、冷暖房の使用頻度や稼働時間を減らせます。
また、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入により、生み出した電力を自家消費できるので、光熱費をさらに削減できます。
エアコンや照明などの家具も節電効率の高いものを導入すれば、さらにその効果は高まるでしょう。
住宅の快適性向上
ZEH住宅は高断熱・高気密な建物構造や高性能な換気システムにより、夏涼しく冬暖かい快適な室内環境を実現します。
外気温の影響を受けにくいため温度変化が抑えられ、湿度や空気環境も適切に保たれます。
その結果、結露の発生を抑えてカビやダニの発生を防ぎ、快適で暮らしやすい住環境を実現できるのです。
さまざまな健康被害の防止
ZEH住宅は、ヒートショックやシックハウス症候群のリスクを軽減し、居住者の健康を守ります。
ヒートショックは、急激な温度変化により血圧が大きく変動し、健康に悪影響を及ぼす現象です。
特に、高齢者や体の弱い人にとって、ヒートショックは重大な健康リスクとなります。
ZEH住宅であれば、どの季節でも適切な室温に保つことができるので、ヒートショックの危険性を大幅に減らすことが可能です。
また、高性能な換気システムを導入したZEH住宅は、シックハウス症候群の予防にも役立ちます。
シックハウス症候群は、新築やリフォームした住宅で発生する化学物質により、目の痛みや喉の痛み、頭痛などの健康被害が引き起こされる症状です。
ZEH住宅では、適切な換気により室内の空気を清浄に保つことで、シックハウス症候群の原因となる化学物質を減らせるのです。
これらの健康面でのメリットは、居住者のQOL向上だけでなく、医療費削減など社会全体のコスト低減にもつながるでしょう。
参考:一般社団法人 健康・省エネ住宅を推進する国民会議|住環境と健康に 関する最新のエビデンス
災害時でも安心・安全
ZEH区分のなかでも、ZEH+や次世代ZEH+の基準を満たす住宅であれば、太陽光発電システムや蓄電池などによる非常用電源の確保が可能です。
高断熱・高気密な建物構造による室内環境の維持や、床下や天井裏のスペースを活用した備蓄スペースの確保など、災害時の安心・安全を高める機能も備えています。
東日本大震災での教訓から、近年では災害に備えた住宅の重要性が再認識され、ZEH住宅のような自立型の住宅が注目されています。
これらの防災面でのメリットは、居住者の生命を守るだけでなく、災害に強いまちづくりにも貢献するでしょう。
環境負荷の低減
ここまで見てきたメリットからもわかるように、ZEH住宅は省エネルギーと再生可能エネルギーの活用により、環境負荷を大幅に低減します。
冷暖房や給湯、照明などに必要なエネルギー消費量を抑えることで、化石燃料の使用量を減らし、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減することが可能です。
多くの住宅がZEH化することで、社会全体の化石燃料への依存度を下げられます。
これは、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩と言えるでしょう。
ZEH住宅の3つのデメリット
ZEH住宅は多くのメリットを持つ一方で、以下に示すデメリットも存在します。
以降では、これらのデメリットについて、くわしく見ていきます。
初期費用
ZEH住宅のおもな初期費用の高さは、高断熱・高気密化のための建材や高効率設備にくわえ、再生可能エネルギー設備の導入によるものです。
国土交通省のパンフレットによると、新築時で約87万円、リフォームの場合は約231万円費用がかかるとしています。
ただし、補助金や税制優遇措置を活用することで初期費用の負担を軽減可能です。
また、光熱費の削減により、一般的に10年ほどで初期費用を回収できるともいわれています。
長期的な視点でコストを検討し、ZEH住宅の導入を判断することが重要でしょう。
参考:国土交通省|なるほど省エネ住宅(住宅生産団体連合会作成)
メンテナンスや設備の維持費用
ZEH住宅ではさまざまな設備機器の導入により、それらのメンテナンスや設備の維持費用が発生します。
資源エネルギー庁によると、住宅用太陽光発電の維持費は年平均で1kWあたり約3,490 円かかると発表されています。
また、設備にはそれぞれ耐用年数があるので、長年使用していれば部品交換が必要なタイミングも出てくるでしょう。
突然故障して修理せざるをえない状況の発生も可能性を否定できません。
長期的な視点でメンテナンスや設備更新の費用を考慮しながら、長く安全に使い続けるための姿勢も重要です。
参考:経済産業省 調達価格等算定委員会「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」
間取りや建築デザインの制限
ZEH住宅では高断熱・高気密化を実現するために、「南面の開口部の大きさや位置」「断熱材の厚み」「太陽光発電パネルの設置」など、間取りや建築デザインに一定の制限が生じる場合があります。
たとえば、南面の部屋配置の優先、居室面積の減少、屋根形状の制約などが挙げられます。
ただし、建築士や施工会社との綿密な打ち合わせることで、これらの制限をある程度克服することが可能です。
居住者のニーズを満たしつつ、ZEH住宅の性能を最大限に引き出すためには、建築士や施工会社とのコミュニケーションが不可欠です。
ZEH住宅の補助金制度
ZEH住宅の普及を促進するために、国や地方自治体ではさまざまな補助金制度を設けています。
前述したZEHをふくむ省エネ住宅の区分を例にすると、該当する補助金制度はどの区分の基準を満たしているかによって異なります。
区分 | 該当する補助金制度 |
---|---|
ZEH |
|
ZEH+ |
|
次世代ZEH+ |
|
次世代HEMS |
|
LCCM住宅 |
|
これらの補助金を活用することで、ZEH住宅の初期費用の負担を軽減することが可能です。
また、住宅ローン減税制度により、ZEH住宅の購入者は最長13年間の税制優遇を受けられます。
地方自治体でも独自の補助金制度があり、たとえば東京都では「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」、福岡県では「福岡県木造戸建て住宅性能向上改修費補助金」があります。
これらの制度を活用するには申請条件や手続きを事前に把握し、補助金を前提とした資金計画を立てることが重要です。
参考:2023年度[令和5年度]3省連携事業パンフレット
参考:クール・ネット東京 :東京都地球温暖化防止活動推進センター | 「令和5年度東京ゼロエミ住宅導入促進事業」
参考:住宅の省エネルギーに関する制度について – 福岡県庁ホームページ
ZEH住宅を実現するソリューション「eNe」
ZEH住宅を実現するソリューションとして、AI×IoTを活用したリンクジャパンの「eNe」がおすすめです。
ここからは、eNeの特徴や機能、ZEH+要件への対応、導入事例について見ていきましょう。
AI×IoTで住宅エネルギーを最適制御
リンクジャパンの「eNe」は、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を活用し、住宅内のエネルギー使用状況をリアルタイムに把握・分析することで、エネルギー消費量の削減と居住者の快適性向上を実現するソリューションです。
各部屋のセンサーやスマートデバイスから収集したデータをAIが分析し、エアコンや照明など家電の制御を最適化。
太陽光発電や蓄電池とも連携し、電力の需給バランスを予測して最適な使用タイミングを判断します。
居住者は統合アプリHomeLinkで自宅のエネルギー状況を把握・コントロールでき、快適な生活を享受しながらエネルギー消費量と光熱費の削減を実現できます。
eNeの核となるのが統合アプリHomeLink
リンクジャパンの「HomeLink」は、住宅のスマートホーム化に不可欠な統合アプリで、”HomeOS(住宅のOS)”の概念に基づいて開発されました。
PCのWindowsのように、住宅の機器や家電を手のひらで簡単に制御できる基本ソフトの役割を果たします。
エアコン・給湯器・蓄電池・EVやHEMS機器も、HomeLinkひとつで連携・制御可能。
直感的で使いやすいUIにより、住宅エネルギーの見える化や最適化を実現できます。
さらに、居住者のライフステージに合わせて必要なサービスや機器を追加し、住宅を柔軟にアップデートできるのもHomeLinkの大きな特徴です。
社会の変化や技術トレンドに対応し、住宅の付加価値を提供し続けるスマートホーム統合アプリであり、ZEH住宅の実現にも必要不可欠な存在です。
ZEH+補助金の要件にも対応
ZEH+の要件は以下のとおりです。
ZEH+の要件
- ZEH(ゼッチ)の基準を満たしていること
- 省エネ基準の一次エネルギー消費量を25%以上削減すること
- 以下のうち2つ以上の要素を採用していること
・外皮性能の強化
・高度エネルギーマネジメントの導入
・電気自動車を活用した充電設備の導入
eNeは、このうち高度エネルギーマネジメントの導入(HEMS機器の導入)と電気自動車を活用した充電設備の導入に対応できます。
HomeLinkとクラウドを中核に、eNe Sensorなどのエネルギーマネジメント製品も組み合わせ、創エネ・蓄エネ・省エネを備えた住宅の実現を支援。
そのため、ZEH+の高い性能基準をクリアし、補助金を活用してZEH+の導入コストを削減可能です。
導入事例:株式会社ヤマダホームズの戸建注文住宅
eNeの中核となる統合アプリHomeLinkが、株式会社ヤマダホームズの戸建注文住宅全棟に標準採用されました。
これは、ハウスメーカーが戸建注文住宅全棟にホームIoTプラットフォームを採用する国内初の取り組みです。
以下は、eNeを導入した戸建て住宅のイメージです。
ヤマダホールディングスグループの持つ強みと、リンクジャパンのワンアプリで統合するサービスが掛け合わさることで、健康と環境に配慮したスマートホームを実現しています。
公式サイト
リンクジャパン×ヤマダホームズ ホームIoTプラットフォームを戸建注文住宅に全棟標準採用
まとめ:ZEH住宅で健康と環境にやさしい住まいを実現しよう
ZEH住宅は、大幅な省エネを実現しながら居住者の健康と快適性を高める、健康と環境に優しい住まいです。
ZEH住宅にはさまざまなメリットがある一方で、コストや建築デザインの面ではデメリットもあります。
ただし、補助金の活用や適切な設計・施工の工夫により、克服が可能です。
また、リンクジャパンの「eNe」は、ZEH住宅の性能を最大限に引き出すソリューションとしておすすめです。
創エネ・蓄エネ・省エネを実現するeNeは、居住者の快適性を損なうことなく徹底した省エネを実現し、ZEH+の高度な要件にも対応可能です。
健康と環境に配慮した住まいは、もはや選択ではなく必須の時代。
ZEH住宅は、そのような時代の要請に応える理想的な住まいの形です。
ZEH+要件にも対応可能な住宅の実現には、ぜひリンクジャパンにお問合せください。
お客様のニーズにあわせ、最適なソリューションをご提案いたします。