ZEHは、高い省エネルギー性能を実現し、再生可能エネルギーを活用することで、年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロ以下となる住宅。
地球温暖化対策やエネルギー問題の解消に欠かせない次世代住宅といえます。
ただし、その補助金制度については内容や現在申請できるものがどれなのか、わかりにくく感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、戸建住宅やマンションなどを対象としたZEHに関連する最新の補助金事業を解説します。
補助金申請時、特に注意したいポイントもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
ZEH関連の補助金事業や支援制度
ZEHの普及促進を目的とし、政府はさまざまな補助金事業や支援制度を用意しています。
ここでは、2024年度に申請可能なおもなZEH関連の補助金事業と、すでに受付終了済みの補助金事業を具体的に解説していきます。
令和6年度戸建住宅ZEH化等支援事業
令和6年度戸建住宅ZEH化等支援事業は、ZEHやZEH+の基準を満たした戸建住宅を建てる際に申請可能な補助金事業です。
令和3年度から継続している補助金事業で、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(以下、SII)が取りまとめを行っています。
対象となる住宅や交付要件・補助額などは、以下の表にまとめてみました。
区分 | ZEH | ZEH+ | |
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申請対象 | 新築住宅を建築・購入する人 | 新築住宅の販売者となる法人 | |
対象となる住宅 |
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おもな交付要件 |
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補助金額 | 55万円/戸 | 100万円/戸 | |
公募方法 | 先着方式 | ||
公募 期間 |
新規取組 | 2024年4月26日~2024年8月30日 | |
単年度事業 | 2024年4月16日~2025年1月7日 | ||
複数年度事業 | 2024年11月5日~2026年1月7日 |
対象となる住宅の要件は以下のとおりです。
種別 | 外皮の断熱性能等の 大幅な向上 |
一次エネルギー 消費量削減率 |
再生可能 エネルギー |
その他 | ||
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省エネのみ | 再エネ等ふくむ | 導入 | 導入の追加要件(※1) | |||
ZEH | 必須 | 20%以上 | 100%以上 | 必須 | ー | ー |
ZEH+ | 必須 | 25%以上 | 100%以上 | 必須 | 有り | ー |
Nearly ZEH | 必須 | 20%以上 | 75%以上 100%未満 |
必須 | ー | 寒冷地、低日射地域、多雪地域に限る |
Nearly ZEH+ | 必須 | 25%以上 | 75%以上 100%未満 |
必須 | 有り | |
ZEH Oriented | 必須 | 20%以上 | ー | ー | ー | 都市部狭小地等の二階建以上および多雪地域に限る |
※1 以下の再生可能エネルギーの自家消費拡大措置のうち、2つ以上を導入
|
また、蓄電システムなどの導入により、追加で補助金が交付されます。
追加補助対象設備 | 追加補助額 |
---|---|
蓄電システム | 上限20万円 |
直交集成板(CLT) | 定額90万円 |
地中熱ヒートポンプ・システム | 定額90万円 |
PVTシステム (太陽光+太陽熱ハイブリッドモジュール) |
65万円、80万円、90万円 ※方式、パネル面積により異なる |
液体集熱式太陽熱利用システム | 12万円、15万円 ※パネル面積により異なる |
ZEH+の場合、ハイグレード仕様要件を満たすとさらに補助金が追加されますが、再生可能エネルギーの自家消費拡大措置の組合せによって違いがある点に留意してください。
種別 | 自家消費拡大措置の組合せ | ハイグレード仕様 補助金 |
---|---|---|
ZEH+ | ①外皮性能の更なる強化 ②高度エネルギーマネジメント ③電気自動車を活用した自家消費の拡大措置 |
25万円/戸 |
①外皮性能の更なる強化 ②高度エネルギーマネジメント |
10万円/戸 | |
①外皮性能の更なる強化 ③電気自動車を活用した自家消費の拡大措置 |
戸建住宅ZEH化等支援事業は、住宅の建築主または購入者が申請できますが、手続きが複雑なので住宅業者や工務店などが代行して申請するのが一般的です。
また、年度ごとに予算が確保されていますが先着方式のため、予算に達した時点で募集締め切りとなる点に注意が必要です。
審査期間や完了実績報告提出期限などの詳細なスケジュールは、SIIホームページに掲載されているので、事前に確認しておきましょう。
参考:ZEH Web|ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業
参考:経産省|更なるZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性等について
令和6年度集合住宅の省CO2化促進事業
令和6年度集合住宅の省CO2化促進事業は、マンションなどの集合住宅を対象とした補助金事業です。
対象となる住宅や交付要件・補助額などは、以下の表にまとめてみました。
区分 | 高層ZEH-M支援事業 | 中層ZEH-M支援事業 | 低層ZEH-M促進事業 | |
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対象となる住宅 |
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おもな交付要件 |
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補助金額 | 補助対象経費の1/3以内 ※事業期間は最長4年(上限:3億円/年、8億円/事業、50万円/戸、補助事業の費用対効果) |
40万円/戸 ※事業期間は最長3年(上限:3億円/年、6億円/事業) |
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追加補助 | 以下の対象設備を導入する場合、補助額を加算
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公募方法 | 採択審査方式(※2) | 先着方式 | ||
公募 期間 |
一般公募 | 2024年5月27日 ~ 2024年6月21日 |
2024年5月10日 ~ 2024年12月6日 |
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新規取り組み | ー | 2024年5月10日 ~ 2024年8月30日 |
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※1 補助事業者の条件は、高層・中層・低層それぞれで若干の違いがあります。 詳細はSIIホームページのネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業の パンフレット5〜6ページ目の表を参照ください。 ※2 申請金額が予算枠を超えた場合、審査により採択案件が決定されます。 |
ZEH-Mは、省エネ率と太陽光発電のような再生可能エネルギーの採用有無により、以下4つの種別に分類されています(基準は住棟全体)。
種別 | 外皮の断熱性能等の 大幅な向上 |
一次エネルギー 消費量削減率 |
再生可能エネルギーの導入 | ||
---|---|---|---|---|---|
省エネのみ | 再エネ等ふくむ | ||||
ZEH-M | 必須 | 20%以上 | 100%以上 | 必須 | |
Nearly ZEH-M | 必須 | 20%以上 | 75%以上 100%未満 |
必須 | |
ZEHM-Ready | 必須 | 20%以上 | 50%以上 75%未満 |
必須 | |
ZEH -M Oriented | 必須 | 20%以上 | ー | ー |
補助金額は、高層・中層の場合が補助対象経費の1/3以内に対し、低層の場合は1戸あたり40万円です。
また、対象の再生可能エネルギー設備を設置することで、追加で補助金が交付されます。
こちらの補助金も、審査期間や完了実績報告提出期限などの詳細なスケジュールがSIIホームページに掲載されているので、最新の情報を事前に確認しておきましょう。
参考:ZEH Web|ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業
子育てエコホーム支援事業
子育てエコホーム支援事業は、子育て世帯・若者夫婦世帯を対象とした住宅の省エネルギー化を推進する補助金事業です。
子育てエコホーム支援事業の概要は以下のとおりです。
補助対象 | 補助対象事業 | 対象者 | |
---|---|---|---|
注文住宅の新築 | 建築主 | ||
新築分譲住宅の購入 | 購入者 | ||
リフォーム | 工事発注者 | ||
補助額(上限) | 注文住宅の新築 |
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新築分譲住宅の購入 | |||
リフォーム |
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登録事業者 | 補助事業 | 契約 | 対象者(補助事業者) |
注文住宅の新築 | 工事請負契約 | 建築事業者(工事請負業者) | |
新築分譲住宅の購入 | 不動産売買契約 | 販売事業者(販売代理を含む) | |
リフォーム | 工事請負契約 | 工事施工業者 | |
補助金の還元方法 | 登録事業者は、交付された補助金をあらかじめ補助対象者と合意した①②どちらかの方法により還元する。 ただし、還元方法は原則①。 ①補助事業に係る契約代金(最終支払に限る)に充当する方法 ②現金で支払う方法 |
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対象期間 | 契約日の期間 | 不問 | |
対象工事の着手期間 | 2023年11月2日以降 | ||
交付申請期間 | 2024年4月2日~予算上限に達するまで
(遅くとも2024年12月31日まで) |
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※1 洪水浸水想定区域、または高潮浸水想定区域における浸水想 定高さ3m以上の区域を指す。 |
子育て世帯と若者夫婦世帯については、以下のように定義されています。
子育て世帯 | 申請時点において、2005年4月2日以降に出生した子を有する世帯(※1) |
---|---|
若者夫婦世帯 | 申請時点において夫婦であり、いずれかが1983年4月2日以降に生まれた世帯(※1) |
※令和6(2024)年3月31日までに建築着工するものは、2004年4月2日以降 |
補助金の額は、対象事業・住宅の状況・世帯によって異なります。
補助金が一番高い長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のことで、所管行政庁(都道府県、市町村等)にて認定を受けた住宅です。
ZEH水準基準は、ZEH・Nearly ZEH・ZEH Ready・ZEH Orientedが該当するだけでなく、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅も該当します。
長期優良住宅やZEH水準住宅は証明書類が必要です。
くわしくは、子育てエコホーム支援事業サイトの「住宅証明書等の一覧」を参照してください。
2024年5月15日時点で、この補助金の予算に対する割合は新築・リフォームあわせて21%(新築14%、リフォーム7%)なので、補助金の予算的にはまだ余裕がある状況です。
また、事業別の補助金交付申請方法は、子育てエコホーム支援事業サイトで個別にまとめられているので最新の情報を確認するようにしましょう。
参考:子育てエコホーム支援事業
住宅ローン減税
住宅ローン減税は、住宅購入に伴う経済的負担を軽減するために設けられた税制上の優遇措置です。
一定の要件を満たすZEH住宅の購入で住宅ローンを利用した場合、借入金の残高0.7%を所得税から控除できます。
所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税からも一部控除されます。
住宅ローン減税のおもな要件は以下のとおりです。
借入限度額は「住宅の種類(環境性能など)」「入居時期」「区分(新規/既存)」にくわえ、世帯に応じて異なり、ZEH住宅の場合は以下のように定められています。
新築/中古 | 借入限度額 | 控除期間 | ||
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2024年入居 (令和6年) |
2025年入居 (令和7年) |
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新築住宅 または 買取再販 ※1 |
子育て世帯・若者夫婦世帯 ※2 | 4,500万円 | 3,500万円 | 13年間 |
その他の世帯 | 3,500万円 | |||
中古住宅 (既存住宅) |
3,000万円 | 10年間 | ||
※1 宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋 ※2 2024(令和6)年12月31日時点で、以下のいずれかにあてはまる世帯 ①年齢19歳未満の扶養親族を有する者 ②年齢40歳未満で、配偶者を有する者 ③年齢40歳以上で、年齢40歳未満の配偶者を有する者 |
住宅ローン減税を受けるためには、初年度のみ確定申告時に必要書類の提出が必要なうえ、入居後6ヶ月以内に住民票の写しを税務署に提出することも必要です。
また、子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額が優遇されるのは、2024年までの点に注意しましょう。
すでに受付を終了している補助金事業(こどもみらい住宅支援事業など)
以下のZEHに関する補助金事業は、予算の上限に達したため、現在はすでに受付を終了しているので注意してください。
- こどもエコすまい支援事業
- 地域型住宅グリーン化事業
- 戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) 化等支援事業
- 次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業
- 次世代HEMS実証事業
- LCCM住宅整備推進事業
ただし、これらの補助金事業は翌年度に新たに予算を組まれたり、同じような内容の補助金事業として新たに受付が開始されたりするケースがあります。
たとえば、「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) 化等支援事業」は、前述の「令和6年度戸建住宅ZEH化等支援事業」として新たに募集中です。
LCCM住宅整備推進事業も、「令和6年度 住宅局関係 予算概算要求概要」に組み込まれているため、今後募集が再開する可能性があります。
LCCM住宅整備推進事業の申請を検討している場合は、国土交通省の最新情報をチェックしましょう。
ZEH補助金を申請する際の注意点
ZEH補助金を申請する際は、さまざまな注意点があります。
スケジュールや申請条件を確認し、必要書類をそろえるなど、適切な手続きを行うことが重要です。
以降では、ZEH補助金を申請する際のおもな注意点を5つ解説します。
スケジュールや条件などは最新の内容を確認
ZEH補助金の申請を検討する際は、スケジュールや条件などの最新情報を確認することが非常に重要です。
補助金事業の内容は年度ごとに変更される可能性があり、申請期間や対象となる住宅の基準が変わることがあるためです。
これらの変更点を見落とすと、申請が無効になったり、補助金を受け取れなくなったりするリスクがあります。
以下のような方法で最新の動向をチェックしておきましょう。
- 国や地方自治体のウェブサイトをチェックする
- 住宅関連団体からの情報を収集する
- 住宅業者や工務店に相談する
期限より前倒しで受付を終了する可能性がある
ZEH補助金の申請を検討する際は、公式に発表されている期限より前倒しで受付が終了する可能性があることを認識しておく必要があります。
補助金事業は、申請が予算額に達した時点で期限前でも受付が打ち切られるためです。
期限前の受付終了を避けるためには、以下のような対策が有効です。
- 早めに申請の準備を始める
- 予算残額や申請件数など、申請状況を公的機関のウェブサイトや住宅関連団体から情報収集する
- 必要書類のチェックリストを作成し、漏れがないようにする
- 住宅業者や工務店と連携し、スムーズに申請を進める
万が一期限前に受付が終了してしまった場合、次年度の補助金事業の情報を確認するのがおすすめです。
受付が終了した補助金事業でも新たに予算が組まれていないか、別の名称の補助金事業として復活していないかを確認してみましょう。
原資が同じ補助金事業は併用できない
ZEH補助金を申請する際は、原資(財源)が同じ補助金事業を併用できない点に注意が必要です。
国や地方自治体が提供する補助金事業には、それぞれ固有の目的や財源があり、二重の補助を防ぐために、併用を制限しているためです。
併用可能な補助金事業を探すには、国や地方自治体のウェブサイトで情報を収集するとともに、住宅業者や工務店に相談することをおすすめします。
ただし、併用する補助金事業の要件を満たすために、住宅の設計や設備に関する調整が必要になる場合もある点に注意してください。
補助金を受け取るには完了報告が必要
ZEH補助金を受け取るためには、工事完了後の完了報告提出が必須です。
完了報告とは、補助金事業の要件を満たす住宅が完成したことを証明するための書類で、たとえば以下のような内容が含まれます。
完了報告の提出は、補助金交付の最終段階にあたるため、提出前に書類の不備がないか十分に確認が必要です。
提出書類に不備があった場合、補助金の交付が遅れたり、交付そのものが取り消されたりするリスクがあります。
また、完了報告の提出期限は、補助金事業ごとに異なります。
一般的には、工事完了から1~2ヶ月以内に提出するよう求められています。
期限を過ぎると、補助金の交付が受けられなくなる可能性があるため注意しましょう。
補助金の受け取りには数ヶ月かかる
ZEH補助金の申請が認められ、完了報告の提出が完了しても、実際に補助金を受け取るまでには数ヶ月かかります。
そのため、補助金の受け取り時期を考慮し、住宅ローンの返済や工事代金の支払いに影響が出ないように資金計画を立てることが重要です。
必要に応じて、住宅ローンの返済開始時期を調整したり、工事業者と支払いスケジュールを相談したりするなど、柔軟に対応しましょう。
まとめ:ZEH補助金は計画的かつ早めのタイミングで申請を
本記事では、ZEH補助金の最新情報を解説しました。
ZEH基準を満たす住宅であれば、以下に示す補助金事業に申請可能です。
申請には手間と時間がかかるうえ、補助金事業の予算上限に達すると受付が締め切られてしまうので、できるかぎり早めのタイミングで申請することが重要です。
補助金の申請も念頭に入れ、住宅のZEH化をお考えの際は、リンクジャパンのソリューション「eNe」をご活用ください。
eNeは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を活用し、住宅エネルギーを最適制御するサービスです。
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