介護におけるIoTとは?新たなビジネスの事例から今後の課題まで詳しく解説

介護におけるIoTとは?新たなビジネスの事例から今後の課題まで詳しく解説 TIPS

介護業界は人手不足によりDX推進やIT化が求められるため、自社のIoT技術も活用して新たなビジネスチャンスをつかみたいと考えている人はいませんか?

この記事では介護におけるIoT技術の活用事例から、今後の課題まで詳しく解説します。

IoTとは?

モノのインターネット「IoT」

IoTとはInternet of Thingsの頭文字を取った言葉で、「モノのインターネット」と訳されます。

具体的には従来インターネットには接続されていなかったモノ=家電製品、住宅、車、電子機器などをインターネットに接続し、データをやり取りする仕組みのことを指すのです。

IoTでできることと、それを介護の現場で具体的にどのように使用するかの具体例をご紹介します。

項目 概要 介護の現場における具体例
遠隔操作 ・遠隔地から信号を送りモノを操作する ・利用者の部屋のエアコンを遠隔操作する
状態監視 ・遠隔地にあるモノの状態を監視する ・介護に使用する物品の在庫管理や発注を自動化する
状況監視 ・センサーなどを活用し遠隔地にあるモノの周辺の状況を監視する ・利用者のバイタルサイン(呼吸、脈拍、血圧など)を計り見守る
データ収集 ・モノを利用する人の情報を収集する ・センサーから利用者の起床、離床を把握して睡眠時間のデータを収集する
データの送受信 ・モノ同士でデータの送受信を行う ・スマホを使って利用者とリアルタイムでコミュニケーションを行う

IoTを介護の現場に取り入れることで、今まで介護職員が行う必要があった仕事をモノが代わりにできるようになることがわかります。

介護におけるIoTの市場規模

介護におけるIoTの市場規模が拡大していくイメージ

2021年11月にSEED PLANNINGが発表した「2021年版 高齢者見守り・緊急通報サービス 市場動向とニーズ調査」によると、高齢者見守り・緊急通報サービスの市場規模は2020年時点で262億円ですが、2030年には381億円に拡大すると予測されました。

この調査における市場規模とは、介護施設向けサービス、自治体向けサービス、家庭・個人向けサービスの3市場の合計を指します。 

このことから、介護におけるIoTの市場規模は拡大傾向にあるため、まだまだビジネスチャンスがあると考えられます。

参考:SEED PLANNING「2021年版 高齢者見守り・緊急通報サービス 市場動向とニーズ調査」

介護における新たなIoTビジネスの事例

シニアマンションのエントランスの階段を下りる高齢者

介護業界で新たなIoTビジネスを立ち上げるために、参考になる事例にはどのようなものがあるのでしょうか。

利用シーンごとに5つの事例をご紹介します。

シニアテックマンション®に「eMamo」を導入して高齢者の見守りができる家づくり

不動産売買やマンション開発事業を行っている株式会社シーラでは、シニア向けのリノベーションとIoTによる見守りシステムを兼ね備えたシニアテックマンション®19室に、株式会社リンクジャパンの「eMamo」を導入して高齢者の見守りができる家づくりに取り組みました。

eMamoの安否確認機能では、人感センサーと開閉センサーを用いて在室しているかどうかや人の動きがあるかどうかを確認できるため、遠くに離れて住む家族がシニアテックマンションに住む高齢者の見守りをすることができるのです。

IoT技術で物件の付加価値を高め、新たなビジネスを生み出したいと考える方は、ぜひ次のページもご覧ください。

【予想以上の反響】「決め手は技術力とアフターサービス」シーラのeMamo導入事例 – (公式)LinkJapan リンクジャパン

「helppad」を導入してオムツ交換の負担を軽減

排泄ケアシステム「helppad」は業界初のにおいで尿と便を感知するセンサーを使った排泄ケアシステムです。

オムツを開けることなく排泄しているかどうかがわかるため、必要な時だけ排泄ケアを行うことができます。

また排泄ケアの記録を電子化し、そこから個人の排泄のパターンをつかむこともできるため、利用者1人1人に寄り添った排泄ケアができるようになるでしょう。

「helppad」は2022年4月の時点では約100の施設におけるレンタル・デモンストレーションで体験が行われ、購入した約20の施設ではトイレ自立へのアプローチや夜間のオムツ交換の削減に貢献しています。

IoT技術で利用者のプライバシーを最大限尊重しながら快適な排泄ケアを実現した好事例と言えるでしょう。

参考:排泄ケアシステムhelplad「おむつの中がわかる、介護の現場が変わる」

運営する介護施設のニーズからコミュニケーションロボット「CoCoRoCo®」を開発

TPR株式会社は、運営する介護施設のニーズからコミュニケーションロボット「CoCoRoCo®」を開発しました。

「CoCoRoCo®」は介護施設に入居する高齢者とコミュニケーションを取るだけではなく、話の内容やその時の高齢者の気持ちを介護職員に報告できます。

また高齢者が「CoCoRoCo®」を抱っこすると、バイタル測定もできるので介護職員の負荷軽減にもつながります。

介護ロボットの導入というと身体介護のサポートというイメージが強いですが、「CoCoRoCo®」はIoT技術を用いて感情的な側面から介護負荷を軽減した好事例と言えるでしょう。

参考:TPR株式会社「新分野」

ケアマネージャーの負担軽減を目的としたデジタルケアマネジメントサービスの研究

Panasonicでは重度化を防止し自立を目指す要介護者に対し、一定以上の水準でケアマネジメントサービスを提供するのを支援するために「デジタル・ケアマネジメント」サービスを開発中です。

具体的には次のような段階を経てケアマネジメントの質を向上させます。

  1. 高齢者の家庭にIoT機器を設置しデータを収集する
  2. 収集したデータを分析し排泄や睡眠などの生活行動を見つける
  3. 生活行動データをケアマネージャーに提供する
  4. データからの気づきを活かしケアプランを検討する
  5. 1.~4.を繰り返すことでケアマネジメントの質を高める

IoT技術を用いれば24時間、365日の客観的なデータを収集できるので、それを基にケアマネージャーが適切なケアプランを作成できるのです。

2023年8月現在、デジタル・ケアマネジメントは地方自治体、ケアマネージャーの職能団体、研究機関などの協力も得て効果検証が進められています。

参考:Panasonic「デジタル・ケアマネジメント」

AIとIoTを組み合わせて認知症高齢者のQOL向上を目指す研究への取り組み

TIS株式会社では、AIとIoTを組み合わせて認知症高齢者のQOL向上を目指す研究に取り組んでいます。

具体的には認知症の高齢者に簡単に携行できるセンサーを装着してもらうことでデータを収集し、認知症の症状であるBPSD(暴言や暴力、興奮、徘徊などの行動症状と、抑うつ、幻覚、妄想などの心理症状)が発症するのを予測し、医療機関、介護施設、家族が連携してケアに当たれるようにするのです。

この取り組みは将来東京都内全域で行えるよう制度設計やシステムが整えられ、「東京アプローチ」として提言される予定となっています。

参考:TIS株式会社「TIS、東京都の『AIとIoTにより認知症高齢者問題の解決を目指す研究』に参画」

介護におけるIoTビジネスを進める上での課題

介護士がタブレット端末で血圧測定をする様子

介護におけるIoTビジネスを進める上では、どのような課題があるのでしょうか。

3つご紹介します。

コスト

2022年に介護労働安定センターが行った「令和4年度介護労働実態調査」において8,632事業所に対し介護福祉機器や介護ロボット、ICT機器の導入についての課題についてたずねたところ、次のような結果が出ました。

回答(複数回答可) 割合
導入コストが高い 47.1%
設置や保管などに場所を取られてしまう 24.5%
清掃や消耗品管理などの維持管理が大変である 22.5%
投資に見合うだけの効果がない 22.4%
技術的に使いこなせるか心配である 20.2%

介護の現場向けのIoT機器を提供する際、開発コストが高いからとそれを価格に転嫁すると、現場での導入コストが高くなり、費用対効果が少ないと見なされ購入してもらえないのがわかります。

価格の設定をする際には、介護現場が考える導入予算に合うかどうかを検討してから行うのがよいでしょう。

参考:介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査について」

機能

介護の現場でよく使用されるIoT機器というと見守りシステムが挙げられますが、例えばこのシステムはデータ収集、データ分析、データの応用の3つの機能が揃うことでメリットがあると言えます。

しかし、3つの機能のうちどれかが低機能である場合、結果的に利用者のQOL向上にはつながらないため、介護事業所に受け入れてもらえない可能性が高いでしょう。

このことから介護におけるIoTビジネスを展開する場合、機器の導入で介護の現場にどのようなメリットがあるのかを明確に定義しておく必要があります。

介護現場の理解

前の項目でご紹介したアンケート結果にもあった通り、介護の現場で働く人たちは新しいIoT機器に対し「技術的に使いこなせるか心配である」という思いを抱えています。

そのため、介護職員の人たちがその機器を使いこなせるようになるまでは丁寧なサポートが必要になるのも忘れてはいけません。

商品やサービスを開発する時は、導入後のサポートも含めて提案できる体制を整えておくことをおすすめします。

まとめ

IoTとはInternet of Thingsの頭文字を取った言葉で、「モノのインターネット」と訳されますが、介護の現場に取り入れることで、今まで介護職員が行う必要があった仕事をモノが代わりにできるようになります。

新たなビジネスチャンスをつかむためにも、介護の現場におけるニーズをしっかりと把握し、商品やサービスに活かすようにしてみてください。

しかしながら、IoTの仕組みをゼロから自社開発するのは費用と時間の両面でハードルが高いのが現実です。リンクジャパンでは、ノウハウがなくてもIoT製品化をワンストップで実現できるアライアンスサービスを提供しています。詳細はこちらから確認できますので、ぜひ検討してみてくださいね。

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