さまざまな地方自治体やSNSでオンライン診療を拡大するということがニュースになっているけれど、治療する側としては本当に適切な診療ができるのか不安に感じる人も少なくないでしょう。
この記事では、オンライン診療が注目される背景から基本的な診療の流れまで詳しく解説します。
オンライン診療とは?
オンライン診療とは診察や診断をしてその結果を伝えたり、薬の処方をしたりするのをさまざまな情報通信機器を用いてリアルタイムで行うことを指します。
情報通信機器を用いた健康増進や医療行為は遠隔診療と呼ばれますが、オンライン診療もこの中に含まれるのです。
オンライン診療は、次の3つのことを目的に行われます。
- 医師が患者の日常生活の情報も得ることで医療の質の向上につなげること
- 治療を必要とする患者が医療に対し容易にアクセスできるようにして、より良い治療を受ける機会を増やすこと
- 患者が治療に自分から参加することで治療効果を高めること
これらの目的を果たしオンライン診療がスムーズに行われるためには、医師と患者双方の協力が必要であることがわかるでしょう。
また、オンライン診療を行うにあたって医師と患者が守らなければならないことは次の通りです。
- オンライン診療は医師と患者の間で合意があった場合に行うこと
- 医師が医学的な観点からオンライン診療が適切ではないと判断した場合はオンライン診療を中止し、対面診療に切り替えること
- 医師は患者との合意をする前に「対面診療を組み合わせる必要があること」「オンライン診療の都度医師がオンライン診療の可否を判断すること」「オンライン診療をするにあたっての診療計画」の3つについて説明をしておくこと
どの項目も病気の見落としや誤診を防止するために重要な事項であるのがわかります。
オンライン診療が注目される背景
オンライン診療が注目されているのは、どのような背景があってのことなのでしょうか。
3つご紹介します。
新型コロナウイルスの影響
2020年4月に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にあたって国では感染防止のため、一時的に特例としてオンライン診療ができるよう制度の見直しを図りました。
具体的には初診から2度目以降の診察、服薬の指導、薬の配送などを電話や情報通信機器を用いて行うことができるようにしたのです。
この見直しによりオンライン診療を実施できる医療機関の割合は次のように変化しました。
2020年4月 | 2020年12月 | 2021年4月 | 2021年12月 | 2022年4月 | 2022年12月 | |
オンライン診療を実施できる医療機関の割合 | 9.7% | 15.0% | 15.1% | 15.5% | 15.9% | 16.1% |
また、2023年5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類から5類に変更されました。
この変更により、新型コロナウイルスにかかった場合限られた医療機関でしか受診可能できなかったのが、幅広い医療機関において受診可能になります。
このことから、新型コロナウイルスの疑いのある患者を来院せずに診療できるオンライン診療は、さらに多くの医療機関で新たな診療方法として採用される可能性が高まるでしょう。
参考:e-GOV法令検索「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」
地方における医師不足
地方における医師不足も、オンライン診療が注目される要因の1つとなっています。
2020年に厚生労働省が発表した「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると医療施設で働く医師の人口10万人あたりの数が最も多いのは徳島県で338.4人、最も少ないのは埼玉県で177.8人でした。
地域によって医師の数が偏っている現状を改善するため、地域医療支援センターが医師の確保を支援する活動を行ったり、都道府県が医師確保計画の策定を進めたりしていますが、オンライン診療であれば必ずしも同じ地域に医師と患者がいなくても診察を行うことができます。
参考:厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
オンライン診療を支える技術の発達
オンライン診療を支える新しい技術が発達してきていることも、注目が集まる要因となっています。
知っておきたい新しい技術を3つご紹介します。
IoT特許技術でコロナ患者病棟を支援
2021年7月より、株式会社リンクジャパンは新型コロナウイルス患者病棟と受け入れホテルを支援するため、スマートナースコールシステム「eBell」の特別価格での提供を開始しました。
「eBell」は医師や看護師が非接触で患者の様子を映像で確認しながら通話を行い問診や訪室対応するかどうかを判断できるため、スタッフの感染予防につながります。
またWiFi環境があれば工事不要で導入できるため、早急なコロナ患者の受け入れやオンライン診療を開始したい病院にとってはメリットが大きいでしょう。
オンライン診療への対応やナースコールシステムの更新を考えている方は、次のページもごらんください。
参考:@Press「IoT特許技術でコロナ患者病棟と受け入れホテルを支援 非接触ナースコール対応を実現できる eBell(イーベル)を特別価格で提供」
MR技術を用いた3次元オンライン診療システム
2020年9月、順天堂大学大学院の研究グループが世界初の3次元オンライン診療システム「Holomedicine(ホロメディスン)」を開発しました。
Holomedicineでは現実とVRを融合させた複合現実(MR)を用いることで、遠隔地にいる患者の3次元動作情報を医師のヘッドマウントディスプレイ (HoloLens)上に投影し、オンライン診療を行うことができます。
またHolomedicineを用いたパーキンソン病のオンライン診療は、対面診療の代わりとして評価に用いることができ、運動障がい、神経疾患のオンライン診療にも役立つことがわかったのです。
Holomedicineを用いることで、今後通院が困難な人に対してもオンライン診療を行えるようになり、対面診察による新型コロナウイルスへの感染リスクを減らすこともできるでしょう。
参考:順天堂大学「3次元オンライン診療システムを開発~ポストコロナを見据えた未来の医療実現に向けて~」
LINEドクター
LINEドクターは通話アプリ「LINE」のビデオ通話機能を用いて医師の診察、薬の処方、薬の配送依頼ができるオンライン診療サービスです。
スマートフォン、保険証、決済をするためのクレジットカード(Visa・Master・AMEX・JCB)かLINE Payを事前に準備し、料金は薬の配送料(通常配送440円、即日配送1,050円)、LINEドクター利用料660円に診療費用と調剤費用が診療後に確定する形です。
定期通院で決まったお薬をもらう人、隙間時間で受診したい人、できるだけ外出を控えたい人などに向くオンライン診療の形だと言えるでしょう。
オンライン診療でできること
具体的にオンライン診療でできることには、何があるのでしょうか。
例をいくつかご紹介します。
- かかりつけ医師による初診
- 既往歴、服薬歴など問診や視診に必要な情報を把握でき患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合のかかりつけ医師以外による初診
- 定期健康診断などで疾病を見落とすリスクがなく治療によるリスクが極めて低い場合の禁煙外来
- 地理的・心理的な要因により対面診療が困難で産婦人科医又は厚生労働省が指定する研修を受講した医師によって行われる緊急避妊のための初診
- 生活習慣病などの慢性疾患のための定期診療
- 薬剤の処方とその管理
- 患者が看護師などといる場合のオンライン診療(D to P with N)
- 患者が医師といる場合のオンライン診療(D to P with D)
詳細は厚生労働省のオンライン診療に関するホームページに記載されていますが、どれもオンライン診療をすることによる病気の見逃しや誤診を最大限防止するため、いろいろな条件がつけられているのが特徴的だと言えるでしょう。
オンライン診療の受け方
治療やケアに携わる人が知っておきたいオンライン診療の受け方の基本的な流れを、東京都臨時オンライン発熱診療センターにおけるオンライン診療の流れを例としてご紹介します。
オンライン診療のルールについて確認する
オンライン診療を受けたい人は、まずオンライン診療のルールについて確認する必要があります。
例えば東京都臨時オンライン発熱診療センターにおけるオンライン診療の場合、次の3つのルールを知っておかなければなりません。
項目 | 概要 |
対象者 | ・都内在住であること
・13才以上64才以下であること ・新型コロナウイルスの検査キットによる自己検査を済ませていること(陽性・陰性いずれも可) ・新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの疑いがあること |
開設日 | ・2022年12月12日 午前9時より受付開始 |
診療時間 | ・土日祝日を含む9時~24時 |
前の項目でご紹介した新型コロナウイルス感染症の感染拡大にあたってのオンライン診療、LINEドクターでもオンライン診療を受けるにあたってのルールがあるので、患者が対象者であるかどうか、予定は合うかなどを確認することが重要です。
オンライン診療を申し込む
リンクが掲載されている事業者のホームページからオンライン診療の予約を行います。
東京都臨時オンライン発熱診療センターにおいてはWeb予約、アプリからの予約、申込フォームからの予約など申込方法が複数あるため、各患者によって使いやすい申込方法を選べるようになっているのが特徴的だと言えるでしょう。
診察料の支払いをして処方薬を受け取る
どのようなオンライン診療を受ける場合も同じですが、診察料として対面診療と同様の負担金が発生します。
また支払い方法に応じた振込手数料や、オンライン診療を利用した時の通信料もかかるのを忘れてはいけません。
そして東京都臨時オンライン発熱診療センターで薬の処方を受けた場合、処方薬は希望する都内の薬局での受け取りか都内住所への配送(配送料は無料)のどちらかを選ぶこととなります。
参考:東京都福祉保健局「東京都臨時オンライン発熱診療センター」
まとめ
オンライン診療とは診察や診断をしてその結果を伝えたり、薬の処方をしたりするのをさまざまな情報通信機器を用いてリアルタイムで行うことを指し、日本では新型コロナウイルス感染症の感染予防、地方の医師不足、オンライン診療を支える技術の進歩などを背景に、診療方法の1つとして広く取り入れられるようになりました。
リンクジャパンもオンライン診療を支える仕組みの1つとして「eMamo」を提供しながら、更なる技術の進歩に取り組んでいます。
この記事も参考にして、ぜひオンライン診療やそれを支える技術について理解を深めてみてください。