冬の入浴時に高齢者が気を付けたいことはヒートショックだと聞いたけれど、具体的にどんな症状が起こるのかがよくわからず対策が取れないと感じている人はいませんか?
この記事ではヒートショックの症状から高齢者がしておきたい対策まで詳しくご紹介します。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは温度の急な変化により血圧が上下し、身体に大きな負荷をかけてしまうことを言います。
健康な人でもヒートショックになる可能性はあり、重症の場合は死亡に至る場合もあるのです。
例えば高齢者の場合、冬に暖房の効いた部屋では血圧が安定していても、入浴しようとして寒い脱衣所や浴室に行くと血管が縮んで血圧が急に上昇します。
しかし浴槽のお湯につかると今度は血管が広がり、血圧が急に下がるためこの急な血圧の上下がヒートショックを引き起こすのです。
2021年に厚生労働省が発表した人口動態調査では、65才以上で「浴槽内での溺死及び溺水」で亡くなった人は4,679人、「浴槽への転落による溺死及び溺水」で亡くなった人は31人でした。
一方2015年10月に都市生活研究所が20才~79才までの男女1236名を対象に行ったアンケートによると、ヒートショックの認知度は44.2%で、半分以上の人が知らないという結果だったのです。
このことから高齢者のお風呂での事故死を防ぐためには、まずヒートショックについての理解を深めることが重要だとわかります。
参考:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」
参考:都市生活研究所「入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~」
ヒートショックの症状
ヒートショックの症状には、どのようなものがあるのでしょうか。
表にまとめてみました。
項目 | 概要 | 対処方法 |
軽度の症状 | ・めまい
・立ちくらみ ・頭痛 |
・安静 |
重度の症状 | ・嘔吐
・呼吸困難 ・意識消失 ・胸の痛み ・ろれつが回らない ・立てない |
・無理に立たせない
・揺さぶらない ・嘔吐物を取り除く ・横向きに寝かせて救急車を呼ぶ |
また浴槽内でおぼれている人を見つけた場合の対処方法は次の通りです。
- 浴槽の水を抜き、大声で助けを呼んで人を集める
- おぼれている人を浴槽から出せそうであれば救出する(出せないようなら沈まないよう上半身をふたに乗せる)
- 救急車を呼ぶ
- 浴槽から救出できたら肩を軽くたたいて声がけをし反応があるか確認をする
- 反応がなければ呼吸を確認する
- 呼吸がない場合床などできるだけ硬いものの上で胸骨圧迫(胸骨の下半分に手をあててもう片方の手を重ねて組み垂直に力を加えるようにする)を行う
- 人工呼吸ができれば胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を繰り返す(できない場合は胸骨圧迫を続ける)
もし症状を見て救急車を呼ぶか判断に迷った場合、救急安心センター事業の電話番号、#7119に架電して相談をしましょう。
救急安心センターでは医師、看護師、トレーニングを受けた相談員が電話口で患者の状況をヒアリングし、救急車を呼んだ方がよいかどうかを判断してくれます。
また緊急性がないと判断された場合でも、受診可能な医療機関や受診のタイミングについてアドバイスをしてもらえるので、自分だけでは適切な判断ができないと感じたら電話をしてみてください。
参考:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」
ヒートショックになりやすい人とは?
ヒートショックになりやすい人の特徴は次の通りです。
- 65才以上の高齢者
- 高血圧、糖尿病、動脈硬化の持病がある
- 肥満、睡眠時無呼吸症候群、不整脈がある
- 浴室暖房乾燥機やヒーターの備え付けがなく浴室や脱衣所の気温が部屋より低い
- 一番風呂、熱い風呂、長風呂を好む
- 飲酒してから風呂に入る
- 入浴前後に水分補給をしない
これらの特徴に心あたりのある高齢者が家族にいる場合、次の項目でご紹介するヒートショック対策を検討してみることをおすすめします。
高齢者がしておきたいヒートショック対策
高齢者のためにしておきたいヒートショック対策は次の5つです。
見守りサービスを利用する
高齢者のヒートショック対策としておすすめなのは、見守りサービスの利用です。
株式会社リンクジャパンが提供する「eMamo」はAIとIoT技術を用いて高齢者の見守り、介護、自立支援をサポートするサービスです。
例えば見守りにおいては心拍・呼吸・離床・在床の通知、体温の24時間継続確認と通知などが活用できるため、高齢者の体調変化により気づきやすくなるでしょう。
またスマートナースコールでどこからでも今の状態をビデオ通話で確認できるため、家族が同居していなくても側にいるという安心感を高齢者の方にもたらすことができます。
工事が不要でWi-Fi環境があれば即日利用開始できるため、すぐにヒートショック対策をしなければと悩んでいる人は下記リンクから問い合わせをしてみてください。
浴室暖房乾燥機を導入する
高齢者のヒートショック対策としては、浴室暖房乾燥機の導入もおすすめです。
2015年10月に都市生活研究所が一都三県在住の55才~69才の男女を対象に行ったアンケート調査の結果によると、脱衣室に暖房がある住宅は築年数にかかわらず戸建住宅で約3割、集合住宅では約2割でした。
一方冬季入浴環境の温度測定の結果、浴室暖房設備のある家はない家と比較して浴室温度が高く、湯温が低くなっているため浴室暖房乾燥機はヒートショック対策として有効であることがわかったのです。
近年はリノベーションやリフォームを施して住み慣れた家に長く住み続ける人も増えており、高効率給湯器の導入促進を目的とした「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」は、2023年3月下旬から交付申請の受付が開始されます。
もしリノベーションやリフォームを検討しているなら、家庭用燃料電池、ハイブリッド給湯器、ヒートポンプ給湯器の導入により上記の補助金をもらうことができるため、補助金を用いた浴室暖房乾燥機の導入を検討するのもよいでしょう。
参考:都市生活研究所「入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~」
参考:経済産業省「令和4年度補正『高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金』について」
入浴前と入浴後に水分補給をする
高齢者は脱水症状になりやすく、脱水症状はヒートショックの可能性を高めるため、ヒートショック対策としては入浴前と入浴後に水分補給をするのが有効です。
自分にとって適切な水分補給量は、次の式で求めることができます。
- 体重×体重1kgあたりに必要な水分量(ml)÷990.5=水分摂取量(リットル)
上記の体重1kgあたりに必要な水分量は年齢によって異なるため、次の値を使用します。
年齢 | 体重1kgあたりに必要な水分量(ml) |
30才未満 | 40ml |
30歳以上55歳以下 | 35ml |
56歳以上 | 30ml |
例えば65才で体重が80kgの高齢者の場合で試算すると、80(kg)×30(ml)÷990.5=2.423・・・となるため必要な水分摂取量は2.4リットルです。
日頃の習慣として取り入れてしまえば続けやすいヒートショック対策だと言えるので、まずはコップ1杯の水を入浴前と入浴後に飲むよう高齢者に勧めてみてください。
参考:厚生労働省<参考>水
入浴方法を工夫する
ヒートショック対策として、入浴方法を次のようにするのも有効です。
- 食後すぐの入浴は控える
- 入浴前に家族に声をかけておく
- 湯温を41度以上に設定すると浴室での事故が増加するため38度~40度に設定する
- 心臓から遠い場所から順番にかけ湯をし、身体を少しずつ温めてから浴槽に入る
- 浴槽に入ったら心臓に負担をかけないようお湯につかるのは胸の下までとする
- 入浴時間は10分以内とする
- 急に浴槽から立ち上がるとめまいや失神を起こす可能性があるためゆっくりと立ち上がるようにする
このような入浴方法を取ったからといってヒートショックが絶対に起きないというわけではないため、リスクの高い高齢者が入浴する際は、家族が気を付けて見守りをするのが望ましいでしょう。
ヒートショック予報をチェックする
日本気象協会が運営する「tenki.jp」では毎日「ヒートショック予報」を発信しています。
ヒートショック予報とは気象予測情報に基づく家の中でのヒートショックの目安で、「油断禁物」「注意」「警戒」「気温差警戒」「冷え込み警戒」の5種類で表示されます。
自分の住むエリアでヒートショックに特に注意しなければならない日を知りたいなら、毎朝ヒートショック予報を確認するのがおすすめです。
まとめ
ヒートショックとは温度の急な変化により血圧が上下して身体に大きな負荷をかけてしまうことを指します。
健康な人でもヒートショックになる可能性はあり、重症の場合は死亡してしまう場合もあるのです。
高齢者や持病を持っているなどヒートショックになりやすい人は、あらかじめ次のような対策を取っておくのが望ましいでしょう。
- 見守りサービスを利用する
- 浴室暖房乾燥機を導入する
- 入浴前と入浴後に水分補給をする
- 入浴方法を工夫する
- ヒートショック予報をチェックする
この記事も参考にして、高齢者のヒートショックを防ぎ健康的な生活を送れるようサポートしてみてください。