家族が高齢者となり、年齢を重ねるにつれてうまく睡眠を取れていない様子が見受けられるけれど、こんなものなのだろうかと疑問に感じている人はいませんか?
この記事では、高齢者の睡眠の特徴から睡眠障がいを改善する方法まで詳しく解説します。
高齢者の睡眠の特徴とは?
高齢者の睡眠は、健康な人でも生理的に変化していきます。
具体的には睡眠時間が若い時に8時間程度だったのが6時間程度、睡眠の質は深い眠りについている時間の割合が減少し、浅い眠りの割合が増加するのです。
また身体やメンタルの病気が原因で睡眠障がいを引き起こすこともあるため、症状に応じた治療を行い改善していくことが大切です。
高齢者の睡眠の特徴を睡眠時間、睡眠の質の2つにわけてご紹介します。
高齢者における睡眠時間の平均
2021年に総務省が行った令和3年社会生活基本調査によると、65才以上の高齢者の睡眠時間の平均は487分であることがわかりました。
高齢者は6時間眠れていれば理想的なので良好な平均値と言えますが、2014年3月の山口県立大学学術情報に掲載された「睡眠と長寿」という論文では、100才以上の人1,907名を対象に行った調査結果では8時間以上の睡眠を取っている人が全体の57%という結果が出ています。
しっかり睡眠時間を確保することで、健康を維持しながら100才以上生きられる人が今後増加するという希望を持てる研究結果だと言えるのではないでしょうか。
参考:山口県立大学学術情報 第7号「睡眠と長寿~百寿者を含む高齢者の睡眠に関する文献レビュー~」
高齢者の睡眠の質
高齢者は睡眠の質にも変化が生じてきます。
具体的には、若い人は深い睡眠が睡眠前半にまとまって出現しますが、3時間程度を目安にその割合は減少し、後半は浅い睡眠が占めるようになります。
中途覚醒もほとんど見られないため、睡眠効率が高いのです。
一方高齢者では深い睡眠が少なく浅い睡眠が主体となり、中途覚醒が多いため睡眠効率が低下します。
このことから、高齢者の場合睡眠の質において、連続して長く眠れないという特徴があるのがわかります。
参考:日本老年医学会雑誌54巻3号「高齢者不眠の病態と対応」
高齢者の睡眠障がい
アメリカ睡眠医学会がヨーロッパ睡眠医学会、日本睡眠学会、ラテンアメリカ睡眠学会の協力により策定した睡眠障害国際分類によると、睡眠障がいは約100種類ほどあり、症状の特徴や原因によって大きく次の8つにわけられます。
- 不眠症
- 睡眠関連呼吸障害
- 中枢性過眠症
- 概日リズム睡眠障害
- 睡眠時随伴症
- 睡眠関連運動障害
- 孤発性の諸症状、正常範囲と思われる異型症状、未解決の諸問題
- その他の睡眠障害
100種類以上の睡眠障がいの中から、高齢者がよく引き起こしやすい睡眠障がいを5つご紹介します。
不眠症
不眠症とは入眠障がい、中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠に関する課題があり、次のような症状が引き起こされることを言います。
- 日中のだるさ
- 意欲の低下
- 集中力の低下
- 食欲の低下
- 抑うつ
- 頭が重い
- めまい
慢性化すると治療を受けなければ回復しにくいのが特徴的だと言えるでしょう。
また不眠症の原因には次のようなものがあり、原因に合わせた対処方法や治療をすることが大切です。
不眠症の原因 | 対処方法や治療 |
ストレス | ・自分なりのストレス解消方法を持つ |
身体の病気(高血圧、心臓病、呼吸器疾患、腎臓病、前立腺肥大、糖尿病、関節リウマチ、アレルギー疾患、脳出血、脳梗塞など) | ・原因となっている病気を治療する |
心の病気 | ・不眠の症状とともに気分の落ち込みや意欲の減退が見られたら専門医を受診する |
薬 | ・降圧剤、甲状腺製剤、抗がん剤などの副作用で不眠症になる場合があるため受診している医師に相談する |
生活リズムの乱れ | ・なるべく規則正しい生活を送る |
環境 | ・寝室の温度や湿度を適切に保ち(温度は20度前後、湿度は40%~70%程度)、周囲に気になる光や騒音がないかを見直す |
一般成人の30%~40%は睡眠に関する課題を何かしら抱えていると言われるため、もし気になる症状があるなら、まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、眠ると呼吸が止まってしまう病気で一般成人では1%~4%ほどの割合でかかっている人がいますが、60才以上の男性高齢者ではこれが20%前後まで上がります。
呼吸が止まると血中の酸素濃度が低下するため、目が覚め再度呼吸をし始めますが、眠るとまた止まります。
この状態が一晩中続くため睡眠が浅くなり、次のような症状を引き起こします。
- 深い睡眠が取れないため日中に強い眠気が生じる
- 血中酸素濃度が低下するため動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなる
- 血中酸素濃度が低下したのを補うため心臓の動きが強まり高血圧となる
- 睡眠不足によるストレスで糖尿病やコレステロール値の上昇をまねき、生活習慣病やメタボリック・シンドロームを引き起こす
下あごが小さく、首が短く、肥満のある人が患者に多く見られるため、当てはまる人は睡眠時無呼吸症候群にかからないよう特に注意が必要です。
中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群では1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上起こるため、高齢者がこのような状態であれば専門の医療機関へ早急に受診しましょう。
レストレスレッグス症候群
レストレスレッグス症候群とは下肢静止不能症候群、むずむず脚症候群とも呼ばれ、入眠前の安静時に生じる下肢を中心とした異常な感覚により入眠が難しくなる病気です。
レストレスレッグス症候群の患者には次のような症状が見られますが、下肢を動かすと症状が軽減するのが特徴的だと言えるでしょう。
- 足がむずむずする
- 虫が這っているような感じがする
- 足が突っ張る感じがする
- 足が痛がゆい
- じっとしていると非常に不愉快
一般成人では1%~3%の割合でかかっている人がいますが、加齢とともにこの割合は増加していき、貧血、尿毒症、関節リューマチなどに合併することもあります。
眠る前に気になる症状があれば、すぐに専門の医療機関に受診しましょう。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「レストレスレッグス症候群」
周期性四肢運動障がい
周期性四肢運動障がいとは、睡眠中に四肢の運動障がいが起きて睡眠がさまたげられてしまう病気です。
周期性四肢運動障がいの主な症状は次の通りです。
- 自覚せず片足か両足の不随意運動が起こる
- 足の関節や親指の背屈(足の先がすねに向かう動き)や、膝の関節の屈曲を伴う
- 1回の不随意運動が0.5秒~5秒ほど、20秒~60秒間隔で出現し、睡眠1時間あたり5回以上引き起こされる
- 自覚症状として不眠や過度の眠気がある
加齢とともに周期性四肢運動障がいにかかっている人の割合は増加し、65才以上の高齢者では20%以上となります。
レストレスレッグス症候群と合併する場合もあるため、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
レム睡眠行動障がい
レム睡眠行動障がいとは、レム睡眠時(身体は休息状態だが脳は活動して覚醒状態にあること)に夢の中での行動を反映して同じ行動を取ってしまう病気のことです。
レム睡眠行動障がいの主な症状は次の通りです。
- 大声で寝言を言う
- 寝たまま殴る、蹴るなど激しい動作をする
- 起き上がって歩き回る
- 窓から飛び出してしまいケガをする
- 他の人にケガをさせてしまう
- 覚醒後は異常な行動や認知障がいなどは見受けられない
高齢者に多いパーキンソン病、レビー小体病、多系統萎縮症などの神経疾患を持つ人が多く発症し、神経疾患に先立ってレム睡眠行動障がいを起こす人もいるため、早めに受診するのが望ましいでしょう。
高齢者の睡眠障がいを早期発見するには?
高齢者の睡眠障がいを早期発見したいなら、見守りサービスの導入がおすすめです。
株式会社リンクジャパンの「eMamo」はAIとIoT技術を用いて高齢者の見守りや介護、自立をサポートするサービスです。
例えば見守りにおいては心拍・呼吸・離床・在床の通知、体温の24時間継続確認と通知などが活用できるため、高齢者の睡眠状態をデータとして把握し、もし睡眠障がいがあれば改善につなげることができます。
またスマートナースコールでどこからでも今の状態をビデオ通話で確認できるため、夜間にうまく睡眠が取れない時、少しお話をして気持ちを落ち着けてもらうこともできるでしょう。
工事が不要でWi-Fi環境があれば即日利用開始できるため、高齢者の睡眠状態があまり良くないことに困っている人は、下記リンクから問い合わせをしてみてください。
まとめ
高齢者の睡眠は、加齢とともに時間や質が変化していくという特徴を持つため、周囲の人が早期に本人がどのような困りごとを抱えているかに気づき、改善へとつなげていくのが望ましいでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ高齢者がより良い睡眠を取って健康を維持できるようサポートをしてみてください。