遠方に住む親が高齢者となったもののなかなかエアコンをつけようとしなかったり、設定温度が高すぎたり低すぎたりして心配になるけれど、理想的な使い方や設定温度をどう説明したらよいかわからず困っている人はいませんか?
この記事では高齢者に合ったエアコンの設定温度について詳しく解説します。
高齢者向けの室温管理の位置づけとは?
室温管理は看護における環境整備の1つとして行われ、環境整備とは安心・安全・安楽のための環境を作ることです。
フローレンス・ナイチンゲールは著書「看護覚え書」の中で看護を「空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に保ち、食事を適切に選択・管理し、このようなこと全てを患者の生命力の消耗を最小限にするよう整えることである」と定義づけています。
また「看護覚え書」では看護の原則が13章にわたって示されていますが、第一章が「換気と暖房」であることからも、室温管理が看護の基本として重要視されてきたことがわかります。
これらのことから高齢者にとっては特に、夏には冷房、冬には暖房を適切に用いて室温管理を行うのが重要だと言えるでしょう。
高齢者における室温管理の現状
高齢者における室温管理の現状と、その管理方法に子供世代がもつ懸念をご紹介します。
高齢者の室温管理
2020年にマイナビニュースが65才以上の高齢者300人を対象にエアコンに関するアンケート調査を行いました。
エアコンの設置状況についてたずねた所、次のような結果が出ました。
エアコンの設置状況 | 割合 |
設置している | 94.3% |
設置していない | 5.7% |
ほとんどの高齢者がエアコンを家に設置しているため、夏や冬のように室温管理が必要になったら対応ができる状態だと言えるでしょう。
また今年の8月におけるエアコンの稼働状況についてたずねた結果は次の通りです。
8月におけるエアコンの稼働状況 | 割合 |
24時間だいたいは稼働していた | 34.3% |
在宅時は基本稼働していたが寝るときや外出時は消していた | 23.7% |
在宅時でも暑さにがまんできるときは消していた | 41.0% |
ほぼ全く稼働していない | 1.1% |
暑さががまんできる時は消していた人と、全く稼働していない人を合わせると42.1%となり、エアコンはあるものの高齢者にとって望ましい室温管理ができていない現状がうかがえます。
一方エアコンはできればつけたくないかという質問をしてみた所、結果は次のようなものでした。
回答 | 割合 |
思う | 42.3% |
思わない | 39.3% |
どちらでもない | 18.3% |
これらのことからエアコンが設置されていても、なるべくつけたくないという考えの高齢者が暑さをがまんしてしまい、健康を害する場合があると考えられるでしょう。
参考:マイナビニュース「高齢者の4割が「エアコンは我慢できるときは消していた」と回答、その理由は? アンケート調査」
子供世代が持つ懸念
前の項目でご紹介したような高齢者の室温管理の実態を、子供世代はどのように感じているのでしょうか。
2022年6月に三菱電機霧ヶ峰PR事務局が発表したプレスリリースでは、高齢者の親を持つ子供世代600名の男女を対象に親のエアコンの使用状況に関する調査を行いました。
同居している親に夏はエアコンを使うよう促したことはあるかをたずねた所、次のような結果が出ました。
回答 | 割合 |
促したことがある | 74.4% |
促したことはない | 21.8% |
覚えていない | 3.8% |
促したことのある人が7割を超えていることから、子供世代は高齢者の親に対してもっとエアコンを活用してほしいと考えているのがわかります。
エアコンを使うよう促した結果は次の通りです。
回答 | 割合 |
積極的に使うようになった | 29.3% |
以前より使うようになったが未だに使わない日があるので悩んでいる | 44.8% |
全く使わない | 19.0% |
その他 | 6.9% |
「以前より使うようになったが未だに使わない日があるので悩んでいる」「全く使わない」の合計は63.8%で、子供世代が困っているのが垣間見える結果となりました。
また夏場にエアコンを使用せず自宅で過ごしていて、親の体調が悪くなったことがあるかたずねた結果は次の通りです。
回答 | 割合 |
ある | 10.8% |
ない | 73.2% |
わからない | 16.0% |
実際に体調を崩してしまった親もいることから、子供世代としては親のエアコンの使い方を見直してほしいけれど、なかなかうまく伝えられないのが現状だと言えるでしょう。
子供世代ができる伝え方の工夫は次の3つです。
- 温度計や湿度計を設置して室温や湿度を高齢者自身が把握できるようにする
- エアコンはつけ始めに一番電気料金がかかることを周囲の人から繰り返し伝える
- 「親には元気でいてほしい」という気持ちを含めて伝える
必ずしもすぐに納得してくれるとは限りませんが、根気よく説明を行うことが大切です。
参考:三菱電機霧ヶ峰PR事務局「夏場、エアコンを使用したがらない高齢者が 10 人に 1 人も… これでお悩みスッキリ!高齢者にエアコンをつけてもらうための 3つの意識改革とコミュニケーション方法」
高齢者に合った室温管理をするメリット
高齢者に合った室温管理をすると、次のようなメリットがあります。
- 夏に起こりやすい熱中症を予防できる
- 冬に起こりやすいヒートショックを予防できる
- 体温調節機能が衰えてきている高齢者にとって心地よく過ごせる空間を作れる
ヒートショックとは温度の急な変化により血圧が上下し、身体に大きな負荷をかけてしまうことです。
ヒートショックについても詳細を知りたい方は、次の記事もごらんください。
ヒートショックとは?症状から高齢者がやっておきたい対策まで詳しくご紹介 | LinkJapan BLOG
高齢者に合ったエアコンの設定温度
高齢者に合ったエアコンの設定温度とは、どのようなものなのでしょうか。
エアコンをよく使用する夏と冬に分けてご紹介します。
夏
環境省が運営するWebサイト「COOL CHOICE」では脱炭素社会を実現するための情報提供がされていますが、「COOLBIZ」のページで夏における家族の健康のための適正な室温を28度と定めています。
つまり、夏は室温が28度になるようなエアコンの温度設定を心がければよいというわけです。
大手エアコンメーカーのダイキンでは、適正な室温になるための温度設定の方法としてエアコンを適正な室温と同じ温度に設定し、自動運転モードを使うのを推奨しています。
自動運転モードを使用すると室内温度が設定温度になるまでは最大運転を行い、その後は送風運転や弱運転で設定温度と同じ温度を維持してくれるためです。
また高齢者は体温調節機能が衰えていることからエアコンだけで室温管理をするのではなく、環境省が推奨する次のような涼しく過ごすための工夫も取り入れてみましょう。
- 除湿を心がける
- こまめにエアコンのフィルター清掃をする
- 室外機の周囲に物を置かず屋根をつけて直射日光を避ける
- エアコンの買い替えの時は冷房効率の良い機器を選ぶ
- うちわや扇子を利用して体感温度を下げる
- 緑のカーテンを作ってみる
- 食事に夏野菜を取り入れる
- 使わない家電のスイッチを切って放熱による室温上昇を防ぐ
- 朝や夕方に打ち水をする
- 冷感グッズを使う
- 涼しい服装を心がける
エアコンがあまり好きではない高齢者にも、打ち水やうちわ、緑のカーテンなどから勧めてみると涼しく過ごす工夫を実行してもらいやすくなるのではないでしょうか。
参考:ダイキンHVACソリューション東京株式会社「エアコン百科」
冬
COOL CHOICEでは「WARMBIZ」のページで同じく冬における家族の健康のための適正な室温を20度と定めています。
そのためエアコンの設定温度は20度とし、自動運転モードを使いましょう。
また高齢者の場合、環境省が推奨する次のような方法でエアコン以外での室温管理も行うのがおすすめです。
項目 | 概要 |
衣 | ・「首」「手首」「足首」の3首を温める
・温める機能のある素材で作った衣服を取り入れる ・膝掛けやストールを活用する |
食 | ・お鍋で身体も室内も温める |
住 | ・温度計や湿度計を設置して室内環境を見える化する
・窓やドアから暖かい空気が逃げないよう断熱シート、二重サッシなどで工夫をする ・湯たんぽ、スリッパ、クッションなどを利用する |
エアコンがあまり好きではない高齢者にも、温かい衣服やストール、湯たんぽなどから勧めると温かく過ごす工夫として取り入れてもらいやすいのではないでしょうか。
また高齢者は足湯や入浴、運動などで身体を温めると健康維持にもつながるでしょう。
高齢者に合った室温管理ができるサービス「eMamo」とは?
親にエアコンをつける大切さを説明し続けてもあまり納得してもらえない場合は、高齢者に合った室温管理ができるサービス「eMamo」がおすすめです。
「eMamo」はAI×IoT技術を用いた株式会社リンクジャパンの高齢者向けヘルスケアサービスで、工事不要でWi-Fi環境さえあれば即日利用開始できるのが特徴的だと言えるでしょう。
「eMamo」では高齢者の方がいる室内の温湿度、照度を把握して通知し、それに合わせてエアコンをリモート操作できるだけではなく、温度センサーで自動運転することもできます。
また高齢者の体温を24時間継続確認して通知するため、エアコンのコントロールで体調がどのように変化したのかを観察することも可能です。
エアコンが好きではない両親を説得するのに疲れてしまった方は、ぜひ次のページものぞいてみてください。
eMamo(イーマモ) – (公式)LinkJapan リンクジャパン
まとめ
高齢者に適切なエアコンの設定温度は、環境省によると夏は28度、冬は20度とされているため、健康維持のためにも適切な室温管理をすることが大切です。
この記事も参考にして、ぜひ高齢者が快適に過ごせる空間作りを心がけてみてください。