介護施設に勤務してから利用者の正確なバイタルチェックを求められるけれど、なぜ重要なのかがよくわからないと感じている人はいませんか?
この記事ではバイタルサインを観察する目的から報告方法まで詳しく解説します。
バイタルチェックとは?
バイタルチェックとは「生命」を表す英語のvitalと「確認」を表す英語の「check」を合わせた言葉で身体の状態を表すバイタルサインという数値を確認することを指します。
バイタルサインの種類と正常値、略語を一覧表にまとめてみました。
項目 | 計り方 | 正常値の範囲 | 略語 |
呼吸 | ・1分間の呼吸数を計測
・計測を意識しない自然な回数を計る ・規則正しく行われているかも観察する |
・12回~20回/分(年齢が低くなるほど多くなる) | R(呼吸数ならRR) |
脈拍 | ・手首の動脈に人差し指、中指、薬指を当てて30秒間計り、その値を2倍する | ・60回~100回/分 | P(脈拍数ならPR) |
血圧 | ・収縮期血圧(血液を全身に送るため心臓が収縮した時の血圧で最高血圧ともいう)と拡張期血圧(全身から戻った血液で心臓が拡張した時の血圧で最低血圧ともいう)を計る | ・収縮期血圧120mmHgかつ拡張期血圧80mmHg | BP |
体温 | ・脇の下で最も深い部分に体温計の先端が当たるように差し込んで計る | 36℃~37℃ | BT、T、KT |
意識レベル | ・声がけや刺激に対し普通に受け答えができるかどうかを観察する | 評価指標が2種類あり、Japan Coma Scale(JCS)では
① 覚醒している ② 刺激に応じて一時的に覚醒する ③ 刺激しても覚醒しない という3種類の状態を点数で評価し、 Glasgow Coma Scale(GCS)では ① 開眼(目が開くか) ② 最良言語機能(会話が成立するか) ③ 最良運動機能(言われたことが分かって身体を動かせるか) の3種類を点数で評価する |
LOC |
バイタルチェックは、介護施設においては利用者の状態に合わせて定期的に行い、正確な記録を取ることが大切です。
参考:一般社団法人日本神経治療学会「脳卒中治療ガイドライン2009 付録」
介護施設においてバイタルチェックをする目的とは?
介護施設においてバイタルチェックをする目的は次の通りです。
- 看護や介護に必要なデータを得る
- 現在の健康状態を把握する
- 健康状態の推移を把握する
- 体調急変や異常の早期発見
- バイタルサイン以外の情報収集
バイタルチェックをする時に利用者とコミュニケーションを取ることで、顔色やメンタルの状態なども自然に観察できるため、利用者の現在の健康状態をより正確に把握することができます。
バイタルチェックのやり方
介護施設において望ましいバイタルチェックのやり方とは、どのようなものなのでしょうか。
事前準備、流れ、注意点の3つの観点からご紹介します。
バイタルチェックの事前準備
介護施設においてバイタルチェックを行う場合、次の3つを準備しましょう。
- 電子体温計
- 電子血圧計
- 時計
電子血圧計では脈拍も計ることができるため脈拍だけを計る機器の準備は必要なく、意識レベルの計測をする上でも機器の準備は必要ありません。
準備した機器はそれぞれ使用前に動作確認をしておくと、よりバイタルチェックがスムーズにできるでしょう。
バイタルチェックの流れ
介護施設はバイタルチェック以外にも業務が多いため、ついおざなりにしてしまいがちですが、どれだけ忙しくても利用者さまにバイタルチェックをする旨と、測定の目的をお伝えするのを怠ってはいけません。
計測を担当するケアワーカーが忙しそうにしていたり、緊張感を漂わせていたりすると、それはそのまま利用者に伝わってしまい、それがバイタルサインの変化として現れる場合があります。
バイタルチェックをする場合は、利用者がリラックスして計測に臨めるよう配慮しながら声がけを行うことが大切です。
病院ではバイタルチェックを「体温測定→脈拍測定→呼吸測定→血圧測定」の順番で行うのが望ましいとされますが、介護施設においては実務として「体温測定→脈拍と血圧の測定をしながら呼吸測定」の順番で行うことが多いでしょう。
それぞれの実施手順を表にまとめてみました。
バイタルチェックの種類 | バイタルチェックの実施手順 | 使用する物品 |
体温測定 | ① 電子体温計の先を脇の一番深い所に入れる
② 電子体温計の角度を確認する(体軸に対して30度~40度の角度が望ましい) ③ 計測できたら電子体温計を外し、着衣を整える |
・電子体温計 |
脈拍測定 | ① 電子血圧計を利用者の腕にセッティングする
② 計測できたら電子血圧計を外す |
・電子血圧計 |
呼吸測定 | ・体温測定をしている間に利用者の胸からお腹のあたりを見て計測する | ・時計 |
血圧測定 | ・脈拍と同時に計測する | ・電子血圧計 |
呼吸測定を行う際に「呼吸を計りますね」といった声がけをしてしまうと、本来の呼吸数とは異なる数値が計測される場合があるため、利用者には呼吸測定を意識させないよう配慮しながら行うようにしましょう。
バイタルチェック時の注意点
介護施設においてバイタルチェックをする時の注意点は次の通りです。
- 同じ時間帯に行うようにする
- 正常値の範囲にとらわれすぎず個々の利用者における通常時のバイタルサインの把握に努める
- 正しい方法で行う
- 記録もれのないようにする
- 呼吸測定は運動後や興奮状態、無理な体勢で行うと正確性に欠けるため安静時に行う
- 脈拍測定は入浴後、食事後、運動後などの興奮状態で行うと早くなり正確性に欠けるため安静時に行う
- 血圧測定は周囲がうるさい時、トイレを我慢している時などリラックスできない状態では変動するため落ち着いた状態で行う
- 体温測定はわきの下に汗をかいていないか確認し、もし発汗していたらふいてから行う
- 体温測定は食事後、運動後などの時間帯は体温が上昇し正確性に欠けるため行わない
- 意識レベルの測定で明らかに意識がない場合でも、身体や頭を揺らさず通常の力で肩を叩いて反応を確認する
バイタルサインを正確に計測するためには上記のように細やかな配慮が必要とされますが、利用者の健康維持のためにも手を抜くことなく行うようにしましょう。
介護施設におけるバイタルチェック表の書き方
介護施設におけるバイタルチェック表は、おおまかに次の2種類に分けられるでしょう。
- 利用者全員の一覧にその日のバイタルサインを記録する方式
- 利用者個人のバイタルサインを記録する方式
上記2つはバイタルチェック表としての見た目や書き方は多少異なりますが、記録を取らなければならない内容は同じなので、項目別に記載方法と留意点を表にまとめてみました。
項目 | 記載方法 | 留意点 |
担当者名 | ・バイタルサインの計測者の名前を記載する | ・誤記を防ぐためにも代筆などは避ける |
利用者名 | ・利用者の名前を記載する | ・名前の記載ミスがヒヤリハットや事故につながるため漢字も含めて正確に記載する |
計測日時 | ・バイタルサインの計測を行った日時を記載する | ・日付と時間の記載ミス、記載もれに注意する |
体温 | ・介護施設によって書き方は異なるが「○○度」「KT○○」といった形で記載 | ・数値の記載ミスに注意する |
血圧 | ・収縮期血圧と拡張期血圧の両方を記録する | ・数値の記載ミスに注意する |
脈拍 | ・介護施設によって書き方は異なるが「○○回」「P○○」「PR○○」といった形で記載 | ・数値の記載ミスに注意する |
備考欄(あれば) | ・測定項目以外に普段と異なる様子があれば観察し内容を記載しておく | ・報告時に情報共有しやすいよう簡潔にわかりやすく記載する |
バイタルチェック表はその日のバイタルサインを関係者に報告するというだけではなく、必要あれば本人や家族に共有したり、健康状態の変化に合わせてサービス内容を変更するための資料にしたりといったさまざまな使い方があるため、誰が見てもわかりやすく簡潔に記入することが大切です。
eMamoは介護施設におけるバイタルチェックをサポートします
今までご紹介した通り、介護施設におけるバイタルチェックは時間内での正確な計測と記録が求められるため、介護士として働く方々にとって負担の大きい仕事ですが、AIとIoT技術を使ってその手間を減らすことのできるサービスがeMamoです。
eMamoでは利用者の健康を維持する上で重要なバイタルサインである体温を24時間継続確認し、心拍・呼吸も把握した上で、WebアプリをダウンロードしたPCやiPadで関係者に共有できます。
またもしバイタルサインに異常があれば、スマートナースコールのビデオ通話で利用者の状態をすぐに確認し、必要あれば訪室につなげることができます。
一方eMamoではバイタルサインだけではなく、利用者がトイレを利用中であるかどうか、在床状態であるかどうか、消灯しているかどうかなど、介護士の方々が状況判断する上で必要な周辺情報も併せて確認できるため、緊急時にもより速く適切な対処に結び付けることができるでしょう。
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まとめ
イタルチェックとは「生命」を表す英語のvitalと「確認」を表す英語の「check」を合わせた言葉で身体の状態を表すバイタルサインという数値を確認することを指しますが、正しい手順で計測し、数値のミスや記入漏れのないよう注意して記録を取ることが大切です。
この記事も参考にして、介護施設におけるバイタルチェックについてより理解を深めてみてください。