介護施設の人員配置基準とは?施設別に計算式から違反時の処分内容まで詳しく解説

介護施設 人員配置 TIPS

介護施設で新しく人事担当をすることになったので、人員配置基準に基づいて人を雇用しなければならないけれど、複数のサービスを運営しているのでどこに何人採用すればよいかよくわからず困っている人はいませんか?

この記事では、介護施設の人員配置基準における計算式から違反時の処分内容まで詳しく解説します。

介護施設の人員配置基準と違反時の処分内容

医師の人員配置基準に違反するイメージ

介護施設における人員配置基準とは、入居者に対し配置する職員の人数を職種別に定めた基準のことです。

もし職員の数が人員基準を下回った場合、「厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法」に基づいて利用者全員に対しての基本報酬が70%しか支給されません

これを「人員基準欠如減算」と呼びます。

また人員配置基準を満たせず虚偽の人員報告を行った場合、事業所の指定取り消し、介護報酬の請求の一部制限、新規利用者の受け入れ停止、期限付きでのサービス停止などの行政処分を受けます。

これを「人員基準違反」と呼びます。

人員基準欠如減算、人員基準違反とも介護施設にとって厳しい罰則が科せられるため、人員配置基準を守って施設運営にあたることが大切です。

参考:厚生労働省「厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法」

介護施設別の人員配置基準

デイサービスに配置された女性介護士

介護施設にはさまざまな種類があるため、それぞれの施設別の人員配置基準をご紹介します。

介護老人福祉施設

介護老人福祉施設は特別養護老人ホームとも呼ばれ、入所者が在宅生活ができるようになるのを目標として日常生活の支援、機能訓練、療養上の世話などを行う介護施設です。

人員配置基準は次の通りです。

 

職種 人員配置基準 法令内での記載箇所
施設長 1人 第12条1
医師 入所者に対して健康管理と療養上の指導をするために必要な数 第12条2
生活相談員 入所者の数が100またはその端数が増えるごとに1人以上 第12条3
介護職員、看護師または准看護師 ・介護職員と看護職員の総数は常勤換算方法で、入所者の数が3人またはその端数が増えるごとに1人以上

・看護職員の数
①    入所者の数が30人以下なら常勤換算方法で1人以上

②    入所者の数が30人以上50人未満なら常勤換算方法で2人以上

③    入所者の数が50人以上130人未満なら常勤換算方法で3人以上

④    入所者の数が130人以上なら常勤換算方法で3人と、入所者の数が50またはその端数が増えるごとに1人を加えた数以上

第12条4
栄養士 1人以上 第12条5
機能訓練指導員 1人以上 第12条6
調理員、事務員、その他の職員 施設の実情に合った数 第12条7

介護職員や看護職員は入所者の数に応じて増やす必要がありますが、栄養士やリハビリの担当者は1人以上いればよいことになっています。

参考:e-GOV法令検索「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」

介護老人保健施設

介護老人保健施設は老健とも呼ばれ、在宅復帰を目指している人の入所を受け入れ可能な限り自立した生活を送れるようリハビリ、必要な医療、介護を行う介護施設です。

人員配置基準は次の通りです。

 

職種 人員配置基準 法令内での記載箇所
医師 常勤換算方法で入所者の数を100で割って出た数以上 第2条1
薬剤師 施設の実情に合った数 第2条2
看護師または准看護師、介護職員 ・常勤換算方法で入所者の数が3人またはその端数が増えるごとに1人以上

・看護職員と介護職員の総数の2/7程度を看護職員、5/7程度を介護職員とする)

第2条3
支援相談員 ・1人以上

・入所者の数が100人を超えたら常勤の支援相談員に加えて常勤換算方法で100人を超えた人数を100で割った数以上)

第2条4
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 常勤換算方法で入所者の数を100で割った数以上 第2条5
栄養士または管理栄養士 定員100人以上の施設の場合は1人以上 第2条6
介護支援専門員 1人以上

(入所者の数が100人またはその端数が増えるごとに1人以上)

第2条7
調理員、事務員、その他の職員 施設の実情に合った数 第2条8

介護老人保健施設は在宅生活への復帰を目指してリハビリを多く行うため、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が必ずいなければなりません。

 参考:e-GOV法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」

認知症対応型共同生活介護

認知症対応型共同生活介護とはグループホームとも呼ばれ、認知症の利用者を対象として家庭的な環境と地域住民との交流のもとで日常生活の支援や機能訓練などを行う介護施設です。

人員配置基準は次の通りです。

職種 人員配置基準 法令内での記載箇所
管理者 専従で常勤の管理者 第91条
計画作成担当者 ・事業所ごとに1人以上

・1人以上は介護支援専門員でなければならない

第90条5

第90条7

介護従事者 ・日中は常勤換算方法で利用者3人に対し1人

・夜間はユニットごとに1人

第90条

第90条3

グループホームは認知症の方向けに、少人数の地域における生活の場で必要なサポートをする施設なので、あまり多数の専門職の配置は義務付けられていません。

参考:e-GOV法令検索「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」

短期入所生活介護

短期入所生活介護とはショートステイとも呼ばれ、心身機能の維持回復や家族介護の負担軽減などを目的とし、短期間施設に滞在して日常生活上の支援や機能訓練などを行います。

人員配置基準は次の通りです。

職種 人員配置基準 法令内での記載箇所
医師 1人以上 第121条1
生活相談員 常勤換算方法で利用者が100人またはその端数が増えるごとに1人以上 第121条2
介護職員、看護師または准看護師 常勤換算方法で利用者の数が3またはその端数が増えるごとに1人以上 第121条3
栄養士 1人以上 第121条4
機能訓練指導員 1人以上 第121条5
調理員その他の従業者 施設の実情に合った数 第121条6

ショートステイは短期間でも利用者にとって過不足のないサービスを提供するため、介護、医療、リハビリ、栄養それぞれの専門職が配置されています。

 参考:e-GOV法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」

通所介護

通所介護はデイサービスとも呼ばれ、心身機能の維持回復や家族介護の負担軽減などを目的とし、定期的に通ってくる利用者に対し日常生活上の支援や機能訓練などを行います。

人員配置基準は次の通りです。

職種 人員配置基準 法令内での記載箇所
生活相談員 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従の人が常勤換算方法で1人以上 第93条1
看護師または准看護師 単位ごとに専従の人が1人以上 第93条2
介護職員 ・単位ごとにサービス提供時間に応じて専従の人が常勤換算方法で次の数以上

①    利用者の数が15人までで1人以上

②    利用者の数が15人を超す場合1人に加え、利用者の数が1人増えるごとに0.2を加えた数以上

・単位ごとに常時1人を配置

・上記2つの条件を満たすと当該事業所の他の単位における介護職員としても勤務できる

第93条3
機能訓練指導員 1人以上 第93条4

デイサービスは日帰りで受けるサービスなので、時間内に利用者が必要とする支援を受けられるよう専門家が配置されています。

参考:e-GOV法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」

人員配置基準における常勤換算の計算式

パートで働く理学療法士

今までご紹介してきた介護施設の人員配置基準の中には「常勤換算方法」という言葉がたくさん出てきましたが、これはどういう意味なのでしょうか。

常勤換算とはその介護施設で働く平均職員数のことです。

介護施設で働く人は正社員だけではなく、派遣社員、パート、アルバイトなどさまざまな雇用形態の人がいるため、人員配置基準を考える際に正社員と同じように1名ととらえてしまうと、実際の現場では人員配置基準に満たないケースが生まれる可能性があります。

そのため正社員以外の人の勤務時間を正社員が何人働いているかに換算して人数を計算することで、正しく人員配置基準を守れるようにしているのです。

常勤換算の計算式は次の通りです。

常勤換算の人数=正社員以外の人の総労働時間÷1人の正社員の勤務時間

正社員以外での雇用を考えている場合はこの計算式を活用し、人員配置基準に合った人数を配置しましょう。

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まとめ

介護施設における人員配置基準とは、入居者に対し配置する職員の人数を職種別に定めた基準のことで、人員基準違反をした場合新規利用者の受け入れ停止、期限付きでのサービス停止など厳しい行政処分が科されます。

一方で、介護職員の人材不足が深刻になっています。AIやIoTなどの技術を活用した働く環境の改善にとどまらず、入居者へ手厚いサポートへの実現が進んでいくことが予想されます。

この記事も参考にして、AIやIotなどの技術もうまく活用した上で人員配置基準を守って職員を雇用し配置しましょう。