今後少しずつケアプラン作成でもAI活用が進むと耳にしたけれど、本当にそんなことが可能なのかと疑問を抱いている人はいませんか?
この記事では、AIを用いたケアプラン作成支援が推進される背景から実装への課題まで詳しく解説します。
ケアプランとは?
ケアプランとは介護保険サービスを受ける際にケアマネージャーが作成する介護サービス計画書のことで、次のような種類があります。
名称 | 対象者 | 該当する介護保険サービス |
居宅サービス計画書 | 要介護認定で 要介護1~要介護5の人 |
・訪問介護 ・訪問入浴 ・訪問看護 ・訪問リハビリテーション ・居宅療養管理指導 ・通所介護(デイサービス) ・通所リハビリテーション ・短期入所生活介護(ショートステイ) ・短期入所療養介護 ・福祉用具貸与 ・特定福祉用具販売 |
施設サービス計画書 | 要介護認定で 要介護1~要介護5の人 |
・介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 ・特定施設入居者生活介護 ・介護医療院 |
介護予防サービス計画書 | 要介護認定で 要支援1~要支援2の人 |
・介護予防サービス |
利用者1人1人の状況と日常生活における課題を把握し、それに合った介護サービス計画書を作成する必要があるため、ケアプラン作成はケアマネージャーにとって負荷の高い仕事であることがわかります。
AIを用いたケアプラン作成支援が推進される背景
AIを用いたケアプラン作成支援が推進される背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
科学的介護の推進
厚生労働省では科学的介護(科学的裏付け=エビデンスに基づく介護)を推進しているため、ケアマネージャーにはAIなどを活用し科学的裏付けに基づいたケアプラン作成を行うことが期待されています。
科学的介護では、次のサイクルを回すことが重要とされています。
- 科学的に妥当な指標を介護の現場から収集、蓄積、分析する
- 分析結果を介護の現場にフィードバックする
- 更なる科学的介護を推進し介護の実践に活かす
このサイクルを回すと次のようなメリットがあります。
- 利用者の状態を向上、維持させ悪化の抑制につながる
- 利用者や家族のQOL(生活の質)の向上につながる
- 介護保険が持続可能な取り組みになる
AIを用いてケアプラン作成をサポートするだけではなく、実践結果を基にブラッシュアップすることで、利用者にとってさらに望ましい介護が実現できるでしょう。
参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」
参考:株式会社国際社会経済研究所「ホワイトボックス型AIを活用したケアプランの社会実装に係る調査研究2022年6月~2023年3月」
ケアマネージャーの人手不足
ケアマネージャーの人手不足も、AIによるケアプラン作成支援を進めなければならない理由の1つとなっています。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」では、ケアマネージャーの2022年の有効求人倍率が4.80倍だったことを公表しており、ケアマネージャー不足が深刻化しているのがわかる結果となっています。
2023年現在、介護保険サービスはケアプランを作成しないと受けられない仕組みになっているため、ケアマネージャーの負荷を軽減できるAIによるケアプラン作成支援に期待が寄せられているのです。
介護業界におけるDXの推進
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、日本語ではデジタルへの変換という意味を持ちます。
経済産業省では産業界全体のDXを推進していますが、介護業界も例外ではありません。
介護業界においてはDXの推進により業務負荷が減るだけではなく、介護のあり方そのものが変わっていくとされています。
そのため介護保険をどのように活用して利用者の課題を解決するのかを記載する、ケアプランの作成支援にAIを用いれば、ケアプランのあり方自体も大きく変わっていくことが予想されるのです。
介護業界におけるDX推進についてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。
AIを用いたケアプラン作成支援の現状
AIを用いたケアプラン作成支援は現状どのような所まで進んでいるのでしょうか。
3つの観点からご紹介します。
調査研究
画像出典:株式会社国際社会経済研究所「ホワイトボックス型AIを活用したケアプランの社会実装に係る調査研究報告書」
2016年度より、老人保健福祉サービスの充実や介護保険制度の基盤の安定を目的とした補助金事業である老人保健健康推進等事業を用いて、AIを用いたケアプラン作成支援についての調査研究が行われています。
最初はAI導入の可能性や導入時の課題についての研究が主でしたが、近年は社会実装にかかる調査研究が進められており、より介護業界への導入を踏まえた調査研究の段階へと進んできたと言えるでしょう。
ケアプラン作成支援AI の枠組み
2022年に国際社会経済研究所が公表したリーフレット「知りたい!ケアプラン作成支援AIってどんなもの?」では、ケアプラン作成支援AIの枠組みが次のようにさまざまな観点から示されています。
観点 | 概要 |
仕組み | AIは利用者の状態に合わせてケアプランにおける複数の選択肢を提案し、ケアマネージャーが最終判断をする |
目的 | 専門職としてのケアマネージャーとAIが協働することでケアマネジメントの質の向上や効率化を目指す |
ケアプラン作成支援AIのあり方 | ・ケアプランは個別化されたものという考え方に沿ったツールにする必要がある
・結果として自立度やADL(日常生活動作)が低下したケアプランがQOL(生活の質)の低下を招いているわけではないという考え方を取り入れたツールにする必要がある |
使用するケアマネージャーの教育 | ・ツールを運用するケアマネージャーにAIの示す選択肢が絶対ではないことを理解してもらう
・ケアマネージャーにAIの特性を知った上で活用してもらう |
上記はまだ研究段階で示された枠組みなので、これからケアプラン作成支援AIの開発を進める上でさまざまな角度から議論を繰り返す必要があるでしょう。
参考:株式会社国際社会経済研究所「ホワイトボックス型AIを活用したケアプランの社会実装に係る調査研究2022年6月~2023年3月」
ケアプラン作成支援AI の開発
2021年に国際社会経済研究所が公表した「ホワイトボックス型AIを活用したケアプランの社会実装に係る調査研究2021年6月~2022年3月」では、CDI、ウェルモ、パナソニックの3社が次のようなケアプラン作成支援AIを開発しているという調査結果が報告されました。
メーカー | AIの名称 | 概要 | 状態 |
CDI | 在宅ケアマネジメント基本システム | 約40万件のデータを搭載したケアプラン作成支援AI「SOIN(そわん)」を搭載し、ADL(日常生活動作)や認知症が改善する可能性の高いサービスプランを提案する | 製品化 |
ウェルモ | ミルモぷらん | ケアプラン2表(利用者の課題や目標、課題の改善に向けた具体的なサービスを記載する)の作成を支援し、「ニーズ」「長期目標」といった項目の文章案を5つ示せる | 製品化 |
パナソニック | デジタルケアマネジメント | IoTモニタリング機能で生活ログを収集し、ケアマネージャーから収集した介護実践結果を掛け合わせることでケアプラン作成支援AI構築のための質の高い介護事例を蓄積している | 実証実験中 |
ケアプラン作成支援AIを製品化できている企業はまだ数は多くないものの、製品化後の改善を続けたり、まだ製品化できていない企業でも少しずつ実証実験を繰り返したりと前向きな取り組みを続けているのがわかりますね。
参考:株式会社国際社会経済研究所「ホワイトボックス型AIを活用したケアプランの社会実装に係る調査研究2021年6月~2022年3月」
AIを用いたケアプラン作成支援の課題
AIを用いたケアプラン作成支援には、次のような課題があります。
- 全ての介護事業所の最新データをAIに学習させることはできないため、AIの提案には偏りや現状とのずれが生まれる
- AIに学習させるデータには個人情報が多く含まれるため、高度なセキュリティ保護が求められる
- AIのアルゴリズムの精度を高めるためには継続的に学習し、AIモデルを再構築できる環境を整えなければならない
2023年現在、これらの課題がすぐに解決できる状態にはなっていませんが、少しずつ研究や実験が進むことで新たな解決策を見出す可能性もあります。
ケアプランに基づいた適切な見守りができるサービス「eMamo」とは?
リンクジャパンでは、ケアプランに基づいた適切な見守りができるサービスとして「eMamo」を提供しています。
最新のAI技術とIoT技術が駆使されたeMamoを使うことで、介護職員が利用者の部屋に訪問することなく安否確認や室温管理などをすることができるため、プライバシーに配慮した理想的な見守りを実現できます。
また利用者が何か用事があれば、スマートナースコールを用いてビデオ通話で介護者が利用者の顔を見ながら話ができるので、離れた場所にいてもコミュニケーションが取りやすいのです。
利用者と適度な距離感を維持しながら安心・安全な見守りを実現したい人は、ぜひ次のページもごらんください。
eMamo(イーマモ) – (公式)LinkJapan リンクジャパン
まとめ
AIを用いたケアプラン作成支援サービスは一部製品化されてはいるものの、まだ解決しなければならない課題も多く、研究途上のサービスだと言えるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひAIを用いたケアプラン作成支援サービスについて理解を深めてみてください。