人生会議とは?内容からやり方まで詳しく解説

人生会議とは?内容からやり方まで詳しく解説 TIPS

両親が要介護認定を受けたので、もしもの時にどのようなケアや医療を望むのかを家族で話し合っておきたいけれど、何から始めればよいかわからず困っている人はいませんか?

この記事では、そんな人に知ってほしい人生会議の内容からやり方まで詳しく解説します。

人生会議とは?

人生会議を開く老夫婦と若い夫婦

人生会議とはもしもの時のために自分が望む医療やケアについて考え、その内容を家族や医療・介護を行う人たちと共有しておく取り組みを指します。

元々はACP(アドバンス・ケア・プランニング)という名前でしたが、2018年に厚生労働省が愛称を公募し、応募総数1,073件の中から選ばれたのが「人生会議」という名称です。

人間は命の危険が迫ると約70%の人が医療やケアについての自分の意思を伝えられなくなるため、人生会議への取り組みが生まれたのです。

人生会議という名称が発表された11月30日は、「いい看取り・看取られ」という言葉から「人生会議の日」と定められています。

参考:厚生労働省「『人生会議』してみませんか」

人生会議の現状

母親と娘で人生会議

日本における人生会議への取り組みは、現状どのようなものなのでしょうか。

2017年に厚生労働省が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」で、一般国民、医師、看護師、介護職員、施設長合計6135人を対象に行ったアンケート調査の結果を基に、3つの観点からご紹介します。

人生会議(ACP)の認知度と賛否

アンケートで人生会議(ACP)を知っているかどうかをたずねてみた所、次のような結果が出ました。

よく知っている 聞いたことはあるがよく知らない 知らない 無回答
一般国民 3.3% 19.2% 75.5% 2.0%
医師 22.4% 34.5% 41.6% 1.5%
看護師 19.7% 36.6% 42.5% 1.2%
介護職員 7.6% 40.0% 51.6% 0.7%

 

医療に携わる医師や看護師でもよく知っている人は20%前後で、介護職員では10%を切る結果となり、認知度の低さがうかがえます。

また人生会議(ACP)を行うことに対して賛成か反対かを聞いた所、次のような結果だったのです。

賛成である 反対である わからない 無回答
一般国民 64.9% 2.2% 30.7% 2.3%
医師 75.9% 1.0% 21.5% 1.6%
看護師 76.7% 0.6% 21.0% 1.7%
介護職員 80.1% 0.0% 19.6% 0.4%

賛成が多数派である一方、「わからない」と回答する人が一定数いるのは、医療や介護の専門知識を持たない人の意向を終末期の医療やケアに反映させるのが、本当に望ましいことなのかが判断しにくいからではないでしょうか。

人生会議の開催とその相手

終末期において自分が受けたい医療や療養について、家族や医療・介護関係者と話し合いをしたかをたずねた所、次のような結果でした。

詳しく話し合っている 一応話し合っている 話し合ったことはない 無回答
一般国民 2.7% 36.8% 55.1% 5.4%
医師 9.2% 51.4% 35.4% 4.0%
看護師 5.7% 46.1% 45.1% 3.0%
介護職員 5.8% 44.3% 47.1% 2.8%

人生会議を開いたことがあるかどうかという質問ですが、開いた人と開いていない人がおおむね半分ずつの割合を占めているのがわかります。

また「詳しく話し合っている」「一応話し合っている」と回答した人に誰と話し合ったかを聞いた所、次のような結果だったのです。

家族・親族 友人・知人 医療介護関係者 その他 無回答
一般国民 94.3% 14.6% 4.2% 2.6% 1.3%
医師 97.1% 19.0% 17.0% 0.2% 0.5%
看護師 95.6% 20.7% 17.4% 0.0% 0.5%
介護職員 94.1% 16.4% 20.8% 0.7% 2.2%

家族や親族とは90%を超える人が話し合えていますが、実際に医療や介護を提供する医療介護関係者との話し合いを持てている人は25%に満たないのが現状です。

これらのことから人生会議を開く人はいても、話の内容はあまり具体的ではない場合が多いため、実際に人生の終末期を迎えた際に周囲の人が判断に迷うことも出てくるのではないでしょうか。

人生会議に必要な情報

医療や介護を受ける女性のイメージ

アンケートで受けたい医療やケア、受けたくない医療やケアを考えるためにどのような情報が必要かをたずねた所、次のような結果が出ました。

一般国民 医師 看護師 介護職員
人生の最終段階の心身の状態の変化 26.8% 30.9% 34.3% 37.4%
人生の最終段階に受けられる医療の内容 53.5% 57.2% 54.6% 55.5%
人生の最終段階に過ごせる施設・サービスの情報 51.0% 68.2% 61.7% 58.5%
人生の最終段階に受けた医療や療養の場所に関する体験談 21.3% 26.7% 31.2% 33.0%
人生の最終段階における、自分の意思の伝え方や 残し方 41.8% 56.8% 61.7% 59.0%
人生の最終段階の相談・サポート体制 39.2% 54.6% 60.6% 56.6%
その他 3.8% 1.9% 1.6% 2.0%
知りたくない 6.8% 2.3% 2.1% 2.2%
無回答 3.7% 1.7% 1.5% 0.4%

まずは人生の最終段階において受けられる医療や介護サービスについて情報収集をした後、心身の具体的な状況をイメージできるようになってから、それと照らし合わせて具体的な内容を考えていきたい人が多いのがわかります。

参考:厚生労働省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」

人生会議の内容

心肺停止時の対応についての説明・確認書

厚生労働省と神戸大学が運営する「ACP人生会議」というホームページでは、人生会議で話し合いをし伝えておきたい希望を次のように紹介しています。

  • 家族や友人の側にいたいかどうか
  • 仕事や社会的な役割を続けたいかどうか
  • 身の回りのことを自分でしたいかどうか
  • 医療をどこまで受けるか
  • 家族の負担にならないようにするためにどう配慮するか
  • 延命治療はするか
  • 好きなことをしたいか
  • 1人の時間を確保したいか
  • 自分や家族が経済的に困らないようにするためにどうするか
  • 痛みがある場合の対処

上記は一例ですが、参考にして人生会議の内容を考えてみるのもよいでしょう。

参考:ACP人生会議「人生会議で何を話せばいいの?~『大切にしたいこと』『して欲しくないこと』を伝えておこう」

人生会議のやり方

なごやかに人生会議が進む様子

いきなり人生会議をしようと家族に提案しても、やり方がわからず流れが作りにくい場合には、前の項目でご紹介した「ACP人生会議」の「実際にやってみましょう」というページが参考になります。

このページでは話し合いをして3つのSTEPで提示される設問に回答すると流れに沿って人生会議ができるようになっており、結果をPDFに変換し書面として印刷することもできるのです。

STEP1からSTEP3までの概要をご紹介します。

【STEP1】生きる上で大切にしていることは何かを考える

STEP1では自分が生きる上で大切にしていることは何かを考えます。

 「生きる上で大切にしていることは何か」と唐突に質問されると抽象的で答えにくいですが、このページでは自分の考えを、そのような考えを持つに至った経験や理由も含めて書き起こしていくので、最初は抽象的だった考えが少しずつ具体化していくでしょう。

また設問には具体例がついていたり、選択肢がたくさん準備されたりしているので、普段あまり自分の意見を口に出さない人の考えも引き出しやすくなっています。

【STEP2】信頼できる人は誰かを考える

STEP2では自分が信頼していて、いざという時に医療やケアについて代わりに判断してほしい人は誰かを考えます。

代わりに判断する人を決めた方がよい理由は次のように説明されています。

  • あなたの価値観や人生観を共有できる
  • あなたの医療やケアに対する考えを伝えておくことができる
  • あなたの考えや好みが尊重される
  • あなたの考えを想像して、不確かなまま決めざるをえない、家族などの気持ちの負担が軽くなる

出典:ACP人生会議「実際にやってみましょう」

どれも説得力のある理由なので、なぜ自分の人生なのにそのような人を決めなければならないのかと感じている人でも、考えを変えてくれるかもしれません。

STEP2ではその人に判断を依頼したい理由や、判断をしてほしいとその人に伝えているかどうかも含めて考えられるようになっています。

【STEP3】これからの医療やケアについて共有する

STEP3ではこれからの医療やケアについてどのようにしてほしいかを、家族だけではなく医療・介護従事者にも伝えられるようにする準備をします。

具体的には話し合った内容を、どの程度医療やケアについて代わりに判断してほしい人と医療・介護従事者との話し合いにおいて変更してもよいかを決めておくのです。

STEP3までの内容が決まったら結果を印刷できますが、この結果はいつでもホームページから変更できるため、考えが変わったら随時変えておくとよいでしょう。

参考:ACP人生会議「実際にやってみましょう」

人生会議に沿ったケアをAIとIoTで実現するサービス「eMamo」

人生会議の内容をどのように実現するかを考える医療・介護関係者に知っておいてほしいサービスが「eMamo」です。

「eMamo」には次の3つの機能があります。

  • スマートナースコール
  • 安否確認
  • 空調室温(節電)管理

例えばスマートナースコールでは、本人と人生会議に参加した家族や医療・介護関係者がビデオ通話で話ができるため、本人に対する最新の意思確認が手軽にできます。

また安否確認では、IoTを活用したセンシング技術(センサーを用いてさまざまな情報を計測・数値化する技術)で、離れた場所からでも本人の居室の状況を把握できるのです。

人生会議の内容に沿い、できるだけ本人の意志を尊重したケアをしたい人は、ぜひ次のページもごらんください。

まとめ

人生会議とはもしもの時のために自分が望む医療やケアについて考え、その内容を家族や医療・介護を行う人たちと共有しておく取り組みのことです。

まだ日本では人生会議の認知度が医療・介護関係者も含めて低いのが現状ですが、最期までその人らしい人生を送ってもらうためにも、機会を作って人生会議を行うのが望ましいと言えるでしょう。

この記事も参考にして、ぜひ人生会議について理解を深め実践につなげてみてください。