患者さんに服薬指導をする時できるだけ薬についてわかりやすく伝えたいと思っているものの、空回りしてしまってうまく伝わらず困っている人はいませんか?
この記事では服薬指導の流れから会話のコツまで詳しく解説します。
服薬指導とは?
服薬指導とは、患者が病院から処方された薬を適切に使用できるようになることを目的に、薬剤師が薬の効果や副作用などについて説明することを指します。
薬機法の第2条第12項では、薬局では薬剤師が調剤業務とともに薬や医薬品を適正に使用するために必要な情報の提供と薬学的な知見に基づく服薬指導を行うとされています。
また2020年9月1日に改正して施行された薬機法の第9条の4における第5項と、第36条の4における第5項において、薬剤師が調剤時に限らず必要に応じて患者の薬の使用状況の把握や服薬指導を行うことが義務付けられました。
これらのことから今後薬剤師には調剤や調剤時の服薬指導だけではなく、薬を服用している期間において継続的に患者が適切に薬を使えているかどうかの見守りや服薬指導をする役割が求められていくでしょう。
参考:e-GOV法令検索「医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
参考:厚生労働省「薬剤師及び薬局に関する改正薬機法の施行状況及び最近の状況」
服薬指導が重要視されるようになった背景
服薬指導が重要視されるようになった背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
かかりつけ薬剤師が必要な患者が増えてきたため
厚生労働省では、患者が次のような機能を持つ「かかりつけ薬剤師」を持つことを推奨しています。
- 服薬情報をまとめて継続的に把握し、それに基づいて薬学的管理や服薬指導ができる
- 24時間対応、在宅対応ができる
- かかりつけ医を始めとした医療機関との連携ができる
地域で身近な存在の薬剤師がかかりつけ薬剤師になることによって、患者は信頼関係のある薬剤師から継続的に服薬指導を受けられるようになるため、薬の効果や副作用についてより納得感が得られるようになるでしょう。
日本では高齢者をはじめ生活習慣病の予備群など、日常の健康管理が求められる人が年々増加してきています。
このことから、薬局の業務の中でかかりつけ薬剤師が行う服薬指導がさらに重要視されるようになってきたのです。
介護保険サービスにおける居宅療養管理指導のニーズが高まってきているため
画像出典元:厚生労働省 老健局「居宅療養管理指導」
居宅療養管理指導とは介護保険サービスの1つで、利用者が自宅でできるだけ自立した日常生活を送るのを目的として、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが通院の難しい利用者の自宅を訪問して療養上の管理を行うことを指します。
居宅療養管理指導において、薬剤師は医師や歯科医師の指示の下服薬指導を行います。
2023年に厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)で使用された居宅療養管理指導の資料によると、居宅療養管理指導の受給者数は2022年に1,008万1千人となり、2008年に249万1千人だったのと比較すると約4倍に増加しています。
このように高齢者からのニーズが年々高まっていることから、服薬指導がより重要視されるようになってきたと言えるでしょう。
残薬が問題視されるようになってきたため
残薬とは飲み残しや飲み忘れなどが原因で残ってしまった処方薬のことを指します。
この残薬を回収するだけで年間3300億円の薬剤費を削減できるという推計があり、医療費の増加が社会問題となっている日本においては無視できない課題です。
薬は医師に指示された服用のタイミングや期間を守ることで効果が発揮されるため、残薬が発生するのは患者にとって望ましいことではありません。
薬剤師による患者への服薬指導で、薬の効果や副作用について正しく理解してもらい、期間内に飲み切って残薬を出さないようにするのは重要だと言えるのです。
参考:日本経済新聞「『節薬』しませんか?飲み残しを薬局へ、服薬指導も」
服薬指導の流れ
薬剤師が服薬指導をする時は、どのような流れで行うのがスムーズなのでしょうか。
5つのSTEPにわけてご紹介します。
【STEP1】患者に声がけをする
患者に声がけをして投薬台へと誘導しましょう。
挨拶と自己紹介をしたらフルネームで患者の名前をお呼びして本人確認を行います。
この後のコミュニケーションを円滑に行うためにも、聞き取りやすい声の大きさで相手のテンポに合わせて話すよう心掛けましょう。
【STEP2】ヒアリングをする
適切な服薬指導を行うためには、患者の症状をヒアリングするのが大切です。
症状は以下の項目で質問票を作成しておき、他にも確認したい事項がある場合は直接確認すると現状が過不足なく把握できるでしょう。
- 治療中の病気とその症状
- アレルギーや既往症、併用薬の有無
- サプリメントを服用しているかどうか
- 過去に処方されて合わなかった薬があるか
- 喫煙や飲酒の習慣の有無
継続して服薬指導をしている患者に対してはこの時経過や副作用の有無について確認します。
【STEP3】薬や医薬品についての説明をする
処方された薬や医薬品についての説明を行います。
以下の項目については抜けがないよう必ず伝えることが大切です。
-
薬の名前
-
薬の効能と効果
-
薬の用法と用量
-
薬の飲み合わせについて
-
薬の副作用
-
薬の保管方法
薬の誤用や残薬を防ぐためにも、患者にとって理解しやすい言葉を選んで説明するのがよいでしょう。
薬は薬袋(やくたい)という袋に入れ、次のものと一緒に渡します。
- 薬剤情報提供書
- 調剤報酬明細書
- 領収書
- お薬手帳
お薬手帳の内容は個人情報に該当するため、返却忘れには注意が必要です。
【STEP4】質問や不明点の確認をする
一方的に説明を行っただけでは患者の薬に対する不安や疑問は解消されていない可能性があるため、説明後にはかならず不明点がないか確認し、質問を促しましょう。
必要に応じて副作用への対処方法や緊急時の連絡先を伝えると、患者が安心して薬を服用できるようになります。
不安の内容を傾聴し患者の感情に共感をしながら理解を示すことで、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
クロージングをする
クロージングとは服薬指導を締めくくり患者のお見送りをすることを指します。
ご挨拶をし、忙しい中でも最後まで丁寧に接することで薬剤師への信頼感が高まるでしょう。
服薬指導における会話のコツ
服薬指導において薬剤師が意識したい会話のコツは次の通りです。
- いきなり本題に入らず日常会話などをしてアイスブレイク(緊張をほぐして和やかな雰囲気を作ること)を行う
- 一方的に説明するのではなくまずは患者の話を傾聴する
- 最初にオープンクエスチョン(回答の形式に制限がない質問)をして患者の気持ちや考えを把握し、次にクローズドクエスチョン(回答の選択肢がある質問)をして症状を把握する
- 患者の体調、理解度、性格、家庭環境などに応じて説明の内容を変える
- 資料やパンフレットなどを使う
人間には認知特性といって五感から入ってきた情報を頭の中で整理、記憶、理解する能力があり、視覚優位、言語優位、聴覚優位の3種類に大別できます。
聴覚優位の人は耳から入ってきた情報を処理するのに長けているので、服薬指導で薬剤師から話を聞くことで薬について理解しますが、視覚優位の人には画像や絵があるパンフレットを用いた説明、言語優位の人には文章の書かれた資料を用いた説明の方がわかりやすいのです。
このことから話しているだけでは伝わりにくいと感じたら、資料やパンフレットを積極的に活用するのが大切です。
スマートホームサービスとオンライン服薬指導システムの連携を開始
2023年9月に株式会社リンクジャパンと株式会社メディバリーはスマートホーム統合アプリ「HomeLink」からオンラインによる服薬指導と医薬品の配送予約ができるサービスを共同で開始しました。
スマートホームサービスとオンライン服薬指導システムの連携は日本で最初の取り組みとなります。
オンライン服薬指導では紙の処方箋、電子処方箋両方に対応し、薬剤師はビデオ通話で薬の説明をすることができます。
あらかじめ予約した時間に服薬指導ができるため、混雑時に患者を待たせてしまうといったことも避けられるのです。
これからオンラインを活用した服薬指導にも積極的に取り組んでいきたい方は、ぜひ次のページもごらんください。
国内初となるIoTスマートホーム統合アプリ上でのオンライン調剤薬局がオープン – (公式)LinkJapan リンクジャパン
まとめ
服薬指導とは、患者が病院から処方された薬を適切に使用できるようになることを目的に、薬剤師が薬の効果や副作用などについて説明することを指します。
コロナ禍をきっかけにオンラインでの服薬指導もできるようになったため、患者の希望に合わせ寄り添った対応をするのが大切です。
この記事も参考にして、患者ファーストの服薬指導の流れを作ってみてください。